夏に録画しておいたのをようやく観ました。アニメ映画、主人公ミヨリ役の声優は蒼井優ちゃんです。


ミヨリは両親の不和をみて育ち、母が家を出て行ったあとは仕事の忙しさを理由に父の親つまりミヨリにとっては祖父母にあたる老夫婦の家に預けられます。そこはケータイの電波も入らない、森。

もともと東京でも「人を愛する」「人と仲良くする」ということを知らなかったミヨリにとって、ケータイが使えないことはさほどの痛手ではないものの、母に捨てられ父にも捨てられた屈辱は確実に彼女をむしばんでおり、ひとり森の奥へと歩きながら、途中の小川にケータイをぽいと捨てます。虫の息となった心をなだらかにぺしゃっと潰すかのように。せりふは「さよなら、とーきょー」だったけれど、場所への執着はなかったでしょう。むしろ捨てられて居場所を失った自分から目をそらすために、心を捨てた。そんなふうに見えました。


でもそんなミヨリ、じつは10年前、まだ歩けもしない赤ちゃんのころ、両親とこのたび預けられた父方の祖父母とお花見をしていたとき「神隠し」に近い形で森のご神木までワープというか、森に住む精霊たちに導かれてご神木と対面しているのです。そして、この森を託すと告げられていた……


ミヨリが10歳にして巧妙な自己正当化から抜け出し、賢くものごとを見て成長していく姿はなんていうか、そうだトトロでサツキとメイが「んー、ぱぁっ」と伸びをすると芽が出てそれが伸びすんごい巨木に育ってくシーンがあるでしょう、あれみたいに急激なんだけれども、無理な展開だなあとかそんなことは感じなくて、心に潤し「仲間」と協力することを覚え、誰かの事情のせいではなく自分で自分の生きる環境を選びとったミヨリがただただ強く、しなやかな女の子だなと感心させられました。


森の風景(背景。木々とか)の絵がすごくきれいだったのも心に残りましたねー。欲をいうなら「大人の事情」を「こっちにも大人の事情ってもんがあるんだよ」で終わらせず、政治的な枠を超えて人間全体の規模で自然を守るにはどこでどう折り合いをつけていけばいいか、ヒントでもいいから何か提示があればもっとよかったかなと。でもそうするとミヨリの立ち位置からはちょっと見えづらい話題になっちゃいますし、この映画の場合は、しょうがなかったかとも思います。


……自然を「守る」っていってる時点で上から目線ですね。本当は「自然あってこその自分たちである」と知識としてじゃなく本当に理解し自覚して自然への敬意、電車でお年寄りに席を譲るような意味での敬意ね、あと思いやりが義務感からではなく本心でもてるようでありたい、という、なんか映画の話からずれてきた気もするけれどもそういうことを考えさせられる作品でした。子供たちに自然の尊さを感じとってもらうにはもってこいな作品。