テレビで放送されていたので観ました。またもや熊澤尚人監督の作品。

私見ですがこの監督が描こうとするのは誰かひとりの内面じゃなくて、誰かと誰かの絆の部分なのかもしれないですね。『虹の女神』『DIVE!!』 とこの『ニライカナイ~』を観て、なんとなくそう感じました。人と人との関係、つながりのあたたかさ、貴さ、なんというかそんな。


さてニライカナイからの手紙。ニライカナイとは韮井さんの奥さん(家内)ではなく、海の向こう、果てしなく遠い場所にある楽園のことのようです。冒頭のシーンで幼い風希(ふうき)に母がそう教えていました。きれいな浜を歩きながら。その母はある日、島の人々に見送られて東京へ去っていく。でも、毎年かならず、風希の誕生日には手紙が届き「いとしい風希へ」「風希ちゃんを信じています」と愛情のこもった言葉が風希を祝福するのです。……


成長した風希を演じるのが、私の大好きな蒼井優。彼女はおじぃと二人で暮らしながら、いつしか写真の勉強をしたいと思うようになり、東京への憧れを募らせます。母に会いたいからではない、母は風希が二十歳になったらすべてを説明すると言ってきているからいいんだと彼女はいいます。ただ、写真を勉強したい。おじぃとの決裂の末、家出のような形で上京。


中学生、高校生、そして二十歳を迎える風希を蒼井優がものすごく自然に好演していて、あらためてすごい女優さんだと思いました。声の出しかたとか、片想いの少女らしさとか。どこをとっても「等身大」という感じで、それはもちろん脚本の力にも拠るところがあるのだろうけど、演じている蒼井優は完全に風希と一体化していて、観ている間、一度も「蒼井優」という名前で意識しなかった。風希、と思っていました。


二十歳の誕生日の朝に井の頭公園までくるように、という十九歳の誕生日の手紙。

六歳で別離を経験して以来、初めて会えるお母さん、おっかあ、と、期待に胸をふくらませてカレンダーに赤丸をつける風希が本当にいじらしかった。こんなに大人になってもやっぱり母親の存在は大きいものだよね、と。


ラストは裏切りの裏切りのように(そうかな、ちがうよね、と思っていたのに)ずしんと重かったけれど、おっかあにとってのニライカナイはきっと、愛してやまない風希だったのだろうなと思えました。



……ネタバレになってる? ねえなってる??


いい映画で、観てよかったと思える作品で、再放送も観たいと思わされて、だからついたくさん書いてしまいました。ことばを費やせばよさが伝わるとは限らないのにどうしてもね……

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