Lychee Project
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転がる種

ポケットの中からライチの種を発見したのは一週間後くらいのことだった。ポケットに数個入っているつるつるでごろごろした物体。ポケットに手を突っ込んだ時には眉間を寄せたものだった。でもそれがライチの種であると理解するのには光が地球一周するくらいの時間はかかった。光が地球一周するのに何秒かかるか知らないけど。4個の種を手のひらで転がしてみる。


---そうだ、植えようと思ってたんだ。


酔っぱらってる時の発想なんて当てにならないものだ。シラフの私にはえらく馬鹿みたいな発想に思えてきたのだ。


「あ、それ。こないだの飲み会の時の。ライチの種やろ?」

「え、なんで知っとるん?」

「だって酔っぱらって『ライチいっぱい育てる!』て言いよったやん。」


私はそんなに大きく宣言してしまっていたのか。益々酔っぱらいの発想は当てにならないと思えてきた。酔っぱらいと言っても、私はまだ18歳。今の専門学校に入学して、年上のクラスメイト達と飲みに行くことだけが私の楽しみ。その日も大いに酔っぱらった。


植えなくちゃ、とは思った。でもなかなか行動に移せない。ポケットから取り出された種は自室のパソコンの左横に無造作にばらまかれた。机は散らかっているので種もそれに同化する。私の頭から種は忘れられる。


インターネットで検索してみた。光は一秒間に地球を7周半できるらしい。じゃあライチの種だと理解するのにかかった私の時間は…光が地球を37周半できるくらいだった。訂正しておく。

飲み会にて

こないだ飲み会があった。学校の友達が働いている居酒屋だ。無類のライチ好きの私はライチ酒を頼んだ。友達にはライチを多めに入れてともちろん頼んだ。一回目はやはり周りの目があるからとライチは一個だけしか浮かんでこなかった。しかし、チャイナブルーという色鮮やかなかき氷を思い出させるカクテルを頼んだ時、ライチは二個浮かんでくれていた。店長の目を盗んで二個入れてくれたらしい。友達に感謝した。


私のライチ好きはハンパない。焼き肉屋さんに言ってもサラダバーにあるライチばかりを食べる。焼き肉には手を付けない。ライチだけだ。ライチは食べるのが面倒くさいという人が大半だ。でもそこが私は好きでもある。爪にあの茶色い皮を巻き込んでまで白い実を探り当てるのに必死になる。その課程が好きだ。やはりライチには甘いものも苦いものもある。甘い方と巡り会うために食べ続ける。皿にはぼそぼそになった皮とつるつるてんになった種だけが残される。なんだかそれが快感。


話は飲み会に戻る。お酒で気分が良くなった私はライチの種をポケットにしのばせた。多分、その時咄嗟に種を植えようと思ったのだと思う。その種は何週間もポケットの中に生き続けることになる。


シラフの私によって発見されるのはまた後の話だった。