愛color
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blue my life②

時計の針が12を指す。
昼食はいつも外で済ませる。
夕食の買い物がてら立ち寄ったのがきっかけで、通うようになったカフェレストラン。
この時間は自分の中で唯一、何からも解放されているように思える時間。
いつも通い慣れた道、いつもの商店街を抜けるとひっそりと建っているけどきちんとした存在感のあるお店。
昼時なのに、ガヤガヤした雰囲気は全くない。
この中だけ時間がゆっくり過ぎていくようで…。
なのに今日は、店のドアについた小さな鈴が時間を急かすかのように勢いよく鳴り響いた。
「いらっしゃいませ」
店員さんの穏やかなあいさつも耳に入らないくらい早歩きで一番奥のテーブルに付いた、営業マンぽい男の人。
店の中の時間を一気に狂わせてしまったその人は、もちろん周りから冷たい視線を浴びている。けれどそんな事は気にしちゃいられないような感じで、書類をテーブルに広げては、せわしくどこかへ連絡を取り、頭を下げてみたり怒鳴っていたり…。それでもようやく店内はいつもの時間に戻りつつあった。
あたしはなぜかその人の行動を目で追っていた。
(外で働く人ってこんな時間が流れてるんだ…)
そう思うと、あたしの日常はなんてスローリーなんだろうと実感した。

白いキャンパス⑥

昼休みが終わる頃、僕は急いで教室を出た。
教室の下の中庭に出た。
草原の中に傾いたお弁当箱が落ちていた。
そっと拾いあげて土を祓った。ちょうどチャイムの音が聞こえたけど、教室に戻りたくなかった。
(悪夢はまだ終わってなかった)僕はそう考えるだけで寒気がした。教室に戻らなくてはいけないという意志はあっても体が動かなかった…。
「ガサガサ」
草原の中から音がした。
「あーよく寝た」
草原から背伸びしながらあくびをして起き上がっていた人がいた。
僕は誰かに見つかりたくないと思い急いで立ち上がろうとした時、お弁当箱が膝の上からまた落ちてしまった。
「ガチャン」
その瞬間、草原から起き上がったその人と目が合ってしまった。
「あ!!えっと、あの…」
「弁当、食わないの?」
「いや、あの…」
「こないだ教科書さんきゅ」
そう言われて僕は何がなんだかわからなくなって動揺していた。
「リュウだよ」
「えっ!?し、篠崎くん?」
「お前こんなとこで何やってんの?」
「お弁当…探しに…ハハ…」
こんな理由でここに来た自分が情けなくなった。
「大丈夫かよ」
あの時みたいな、教科書を読んでたみたいな優しい声で僕を心配してくれている。
(やっと会えた…今日学校に来たのはあんな事をされる為じゃない、篠崎くんに会いたかったからだよ)
僕は、篠崎くんに笑って見せた。
「お前、サボリ?」
「そんなつもりじゃなかったんだけど…なんか…」
さっきは笑えたはずだったのにまた顔が曇るのが自分でわかった。
「サボる気ある?」
「えっ?」
篠崎くんの突然の言葉に驚いた。
「いいから行くぞ」
そう言って篠崎くんは中庭から校舎の外に出た。

白いキャンパス⑤

僕は体が震えていた。
また悪夢が蘇るような気がしていたからだ。
やっと解放されたと思っていた。どんなに過酷な受験生活も耐えて来た。全ては、あの悪夢から解放される為に…。
僕が望む事はただそれだけだったのに。
「コイツ泣きそうになってるぞ」僕の机を囲んで声をあげて笑いだした。
「お前中学でイジメられてたんだって?弱そうな面しやがって見てると腹立つんだよ!」
そう言って僕の机を蹴った。
その反動で大きく傾いた机の上から教科書やらノートがバサバサと床に滑り落ちて行く…。
落ちた教科書を拾おうとした時机を蹴った奴は捻るように教科書を踏みつけた。
ぐしゃぐしゃに踏まれているその教科書は僕が今一番大切にしていた教科書だった…。
篠崎くんのサインが書かれていた大切なページがある。
(僕の大切な教科書が…)
そう思った時、僕はそいつの足を思い切り振り払っていた。
バランスを崩したのかそいつは床に倒れこんだ。
「痛ってぇな!生意気なんだよ」そう言って教室を出て行った。まだしっかりとこの手に残っているアイツの足首の感触。
自分にあんな力があるなんて信じられなかった…。
いつもはやり返す事なんか出来ずにただ我慢するしかなかったから。