エステに行った真央は

つるつるになってやって来た。


ルーカの部屋は

思ったより

かなり調度品が高級だった。

お花やフルーツ

女の子が好きそうなスイーツも用意していてくれた。

あの、下であった黒人も一緒だった。

彼はフランス系アメリカ人だった。

ジョニーディップに似ていた。

彼は「マイク」と言う名前だ。


真央と私は別々の部屋に導かれた。

フルーティな香りの中で

私はマイクと英語で会話した。

「ルーカからいきさつは聞いたよ。

 とんだ災難だったね。

 でも、こうして君にめぐり合えたんだから

 彼には感謝しないとね。」

(流石、ナイスガイ。

日本の男の人もこのくらい言ってくれたら

女の子だって嬉しいのにな。)

「マイクは、普段はどんなことをしているの?」

私がそう聞くと彼は意味深な笑いを浮かべた。

「そうか。

ルーカからは

何も聞いてないんだもんね。

僕は、呼ばれたら

その場所にとりあえず行く人。

あとは、ちょっと言えないんだ。

秘密なのさ。

ところで

君は英語も話せるのに

なぜ、勉強をしたいと思っているの?」

「だって、まだ

 日常会話くらいで

 少し、ビジネス英語も必要なの。」

「ふーん。

 そのくらいはなせればいいと思うけどね。

君、香りには興味あるかな?」

「香水とかそういうこと?」

「うん。

リラックス効果がある香り。

お香みたいなものかな。」

そう言ってマイクは立ち上がると

白い粉と紫の粉を混ぜ合わせた。

以前にルーカのドアの前の香りと同じだった。

この場所では、甘くて切なくなるような

そしてコーヒーを飲んだときの数倍は

目が覚めるような意識が目覚めるような

変な感覚に陥った。

「足を伸ばしてごらん。」

私が座っている向井側に

もうひとつ椅子を持ってきた。

私は言われるままに

足を乗せた。

すーっとマイクの手が

つま先からももの方へマッサージを促した。

「こうすると血行がよくなるんだ。

冷え性だろ?

足がこんなに冷たいね。」

彼は更にももの付け根へ手を伸ばした。






ルーカは思ったよりも日本語が上手だった。

第一印象よりもはるかに感じがよく

全く同一人物とは思えないくらいだった。

特に真央は上機嫌で楽しい食事会は終わった。

「今度、イタリア語を教えます。

 遊びに来ませんか。」

と、ルーカは私たちを誘った。

私は返事に躊躇してしまったが

真央はワインの勢いなのか

余程、ルーカが気に入ったのか

二つ返事でOKをしてしまった。

日にちまで2人で決めてしまったが

私はどうもあの部屋へ行くことに

抵抗を感じた。


その約束の日

私は郵便を取りにマンションのロビーに下りていくと

もう一人の黒人の外国人とルーカが何か話していた。

ガッシリした体型で思わず見とれてしまうような

雰囲気をかもし出している。

ルーカはわたしには気がついて手を振ってきた。

「キョウ、マオ、アナタクルデショ。」

「お邪魔するけど、

 真央、ちょっと遅れるかも。」

「ダイジョブデス。

 ジャ、アトデネ。」






約束をしたわけでもないけど

手紙に書いた時間に

西麻布のレストランのロビーで

待ち合わせをすることになっている。

とりあえず

ステキにドレスアップした真央が

息を切らしながらやってきた。

先日の恋人の愛の営みの最中に手紙をおいてきたことを

真央に言うと

「まあ、恋人の一人や二人いるでしょ。」

と軽く笑って言った。

「まあね。

 でも、外まで聞こえちゃうくらい

 激しいんだもん。

 びっくりした。

 こっちが恥ずかしくなっちゃった。」

「そうだね。

 でも、愛し合っているんだもん。

 しょうがないことよ。」

真央は、いつも大人である。

綺麗な大きな目はいつもキラキラしていた。

「ここ、わかりにくかったかな。

 ちょっと、外見てこようかな。」

と、私が立ち上がった時

あの、イケメン

タキシード男がやって来た。

流石に、今日はタキシードではなかったが

品のあるスーツでやって来た。

「ハーイ!」

「いったい、何語で話せばいいの?」

「ニホンゴ、ワカリマス。」

「へー!!!」

それからは

真央がほとんどリードをして

タキシード男に話をしていた。

男の名前はルーカという。

イタリアでは

わりと一般的な名前だそうだ。

私たちは

お花のお礼と

簡単な自己紹介をした。