君への手紙

人物紹介

*** ・・・・ わたし

ポロ   ・・・・ 今の恋人

りんご  ・・・・ 中学からの友達 私の相棒

ミミ    ・・・・ 昔の恋人 同じ高校

みかん  ・・・・ 大学での唯一の友達

ゆず   ・・・・ 中学からの友達  そして愛人

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シレネ

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・・・・・・君に贈る花は、シレネ。


「真実以外は何もいらない」


君はいつだってそういっていたね。本当でなければ意味がない。

耳障りのいい嘘や偽りに踊らされるなんて、私のプライドが許さない、って。


だから私は君に

「私のこと愛してる?」って訊かれるたびに、

そして「愛しているよ」と応えるたびに、どうしようもない気持ちになったんだ。

底のない穴を只管落下し続けているような気持ちがした。

何も見えない、ねっとりと絡みつくような暗闇の中をただ落ちてゆく。


「愛している」ってことがどういうことなのか、私にはよく解らなかったんだ。

君が私にくれたものが、それが愛なのだと気づいたのは随分後になってからだ。

人は全てがすっかり終わってしまってからしか学べないのだ。

物語のひとつのエピローグとして。


今になっても私は未だ

自分が君のことを「愛して」いたのかどうかわからない。

ただ君を傷つけたくない、それだけを考えていた。

君が泣くのを見たくない。

にも関わらず、君の心に平安が訪れることはなく、君は毎週のように泣いた。



偽り続けることは容易いことではない。

本当のことをいうのを、完璧に偽り続けること、どちらが難しいかといえば

間違いなく後者だと私は思う。

なのに私は夢は続くと信じていた。

君を騙し続けることができると。君と自分自身を。


君は本当のことしか知りたくないと言った。

きっとそれは正しい。君は全ての嘘を暴いてしまう。

騙されてしまうことが出来ればどんなに楽だろう。

嘘は決してばれてはいけない。

その瞬間、嘘は罪に変わる。

あるいは最後まで、最期の瞬間まで騙し続けることができたなら

きっとそれは本当だったのだ。


君を信じさせるためにあらゆる努力をした。

私は磨り減った。

その行為を厭わない、ということこそ私の真実の心だった。

つまり君を愛していたんだろうか?

君となら偽りの中へでも堕ちて行けると思っていたんだ。



でも結果的に私は決定的に君を損なうことになった。

もう二度と君は私に「本当」を求めない。




二十歳の誕生日おめでとう。

私は前に進めずにいる。

きっとそれが君の私へのささやかな復讐。



シレネ ―――― 花言葉は 「未練」 「落とし穴」 「偽りの愛」







半年振りのゆずへ

君がこの頃どんな風に過ごしているのか

私はまるで知る術がなかったから、心配していたんだよ。

君の身を心配していたわけではない。

だって何か悪いことがあったら君は私のところに連絡してくるもの。

便りがないのは良い便りってね。

私が心配していたのはもっと別のことだ。


最後に会ったのは去年の十月、メールは十月からたった二通、

そして一通は大学に合格したって報告。

君のウェブ上の日記はまるで更新されずやっと四月に一日だけ。


まぁ連絡をとろうと思えばいくらでもとれたはずなんだ。

私がメールでも電話でもすれば君は返してくれたに違いない。


ただ私は怖かったんだ。

君の中の私に対する「何か」が失われてしまったのではないか、と。

これは確か十月に会ったときに言ったような気がするね。

人は変わってゆく。

やっぱり大切なものなんて作るべきではなかったのさ。

会わない間に君は、昔に私と共有していた問題を

幾つか克服したように思うんだ。


いつだか君は言った。

わたしとゆずを結んでいるのは負の力なのだ、と。

負の力は今切れかけている。

昔君が私に言った言葉をそのまま今君に返したい。

「君の足をひっぱりたくないんだ。」

ゆずは強い子だ。私は知っている。

君は今を生きていて、私は過去を生きている。


君から先日、演奏会のお知らせが来た時、

私は心が凍るような心持がしたよ。

だってそこには、「私のための言葉」は一つも書かれていなかったから。

いくらスクロールしてもそこには

演奏会の日時とチケットの値段しか書かれていなかった。


ミミの一件があってから

色んなことを信じることが以前にも増して難しくなってしまった。

あの件では君を酷く煩わせることになってしまった。

あるいは、君を傷つけた。

私にはきっと謝る資格すらないのだと思う。


話が逸れてしまったね。

だから昨日届いたメールを見て私は少なからず安心した。

「会うべき」だとか「会ったほうがよい」とかではなく、


「会いたい」


ねぇ、私はまた以前のように自分で自分に見切りをつけようとしている。

昔、私の鏡であった君が、微笑みかけてくれさえすれば、と思う。

多分私は確かめたいんだ。

近々ミミにも会うことになるとおもう。


今度こそ、本当に会おう。会いたい。



 あなたのいない帰り道について

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付き合い始めて五ヶ月になるけれども

あなたに実際に手紙を書いたことは一度もありませんね。

第一書いたところであなたはろくに漢字も読めないし

私の言わんとするところをあなたが手紙から読み取るのはきっと

困難だと思うから、私は書かない。


さて、それはいいのです。

どちらにしろ私はあなたに言えないことが沢山あるし

それはきっと伝えるべきではない。

しかしながらこの頃私の中に言葉がどんどん溜まって

いっぱいになってしまったから

こうやって吐き出すことにしたのです。

あなた宛の手紙を、あなたが知らないところで

私もあなたも知らない人が読むというのはおかしなものですね。


今日は大学のない日だから(あなたにはあると言ってあるけれど)

いつものように昼間で寝ていつものようにバイトへ行きました。

いつもと違ったのはあなたが迎えに来なかったことです。

付き合い始めてから週三回毎回毎回夜中にわざわざ

バイト先から私の家までの徒歩七分の道のりを送る為に

あなたはバイクで来てくれましたね。

都合が悪くて来れない時は他の人に頼んで

わざわざ車を出してもらってくれました。


なのに今日は何の連絡もない。


正直なところあなたが毎度迎えに来るのを

私は疎ましく思っていました。

だって一人なら七分の道のりも、あなたがくると

二時間になってしまうから。

毎回午前二時に家に着くのでは、翌日に支障をきたします。


でも私は知らなかった。

あなたが居ない夜の道がこんなに心細いものだとは。

歩道に寄せてある車や、座り込んでいるヤンキーや

すぐ脇を走りぬける暴走族。

何にも怯えず帰ることが出来ていたのは

あなたがいつも守っていてくれていたからなのだと、今日気づいた。


あなたと会う前は全て自分が背負っていたものを

いつの間にか私は少しずつあなたに託してしまっていたようです。

精神的にはあなたには頼れないと思っていたのにね。


取り返しがつかなくなる前に、早くあなたにお別れを言わないと。