人生で最初に観た映画は何だったろう?


きっとそれはテレビで流されていたハリウッド大作であったり、子供向けの夏のアニメだったりするのだろう。


たまたまそれが刺さって一生忘れられなくなる人もいるだろう。

自分はそうではなかった。


自分から、意図して求めて観た映画はこの映画が最初。


「アナザーカントリー」



ちょうどテレビを点けてザッピングし始めたのが15:45。

番組表で、イマジカBSで15:45から始まると知り、あまりに運命的な再会に、腰を据えて観ることに。


20年ぶり、いや、もっとか。


自然美と郷愁に満ちたその映像は、まったく色あせていなかった。


私のキリン王子、ルパート・エヴェレットの奇形ともいうべき美声年ぶり。


その長い指。


溢れる知性、ガラスのようなプライド、抑圧された性、母への思慕、恐ろしく不安定なその精神。


なんて魅力的なんだろう。



少年たちは、そこがモラトリアムでもなんでもないことを知っている。


校内のヒエラルキーが、外の社会でも一生続くことを知っている。


一瞬も気を抜けない弱肉強食の世界で、ガイ・ベネットが心を許した青年は、社会主義者。


彼は代表の座にあと一歩と迫ったところで、運命の恋に落ち、それを逃すことになる。


それが意味することは、彼の望んだ未来を得られないということ・・・


長い長い未来、挫折と絶望を抱えて生きていかなければならないということ・・・


誇り高い彼にとってはどれほどの屈辱だっただろう。


それが「歴史に名前を残したい。たとえそれが汚名であっても」という行為につながるのだけど。



ただ、ガイの唯一の友、トミーの言うことは正しい。


ガイは欲張りだった。


恋を楽しみたいなら、代表の座をつかんでからにすべきだったのだ。


恋は盲目。


恋は身を滅ぼす。


それを私に刷り込んだのが、実はこの映画だったのかもしれない。



当時の英国ほどではないけれど、やはりどこの世界も上に行けば行くほどホモソーシャル。


男同士の世界に女性は入り込めない。


でも、婚姻関係においては、そういう男の方が実のところよいパートナーになりうる。


女という性は自分たちとは違う、理解できない、という意識は、たいていの場面でよい方向に働く。


男も女も同じだ、という発想は、結局のところ、男たちの、自分たちのルールを押し付けるだけに過ぎないのだ。



ともあれ、何度観ても、たとえ長い年月を隔てても、忘れ難い余韻を残す作品。


子供を持つことがあれば、男女どちらであれ、是非見せたい映画。


欲望をコントロールすることが、成功のカギ。


男性の性欲をなくすことができないのであれば、女性はそれとうまく付き合うしかないのだ。


あーめんどくさい。