深夜の電話。
その後、まさかのブロック。
この有無を言わせない感じを嫌いになれない。

気になる言葉を残して、また消えた。
半分眠りの中にいて、コールを取るからやっぱり夢の中の人みたい。

こんなところまであなたを探しにきたよ。
電車の中で少しだけ重たそうな荷物に、長いスカートを履いた黒髪の女性を見て、

はっ

とした。どこか似ていた。

今でも、時折やってくる、溢れ出てくる感情。手で抑えようとしても、それは液体のように指の間から、ジワジワと漏れ出す。

あー、まただ。

写真もメールも全て消されて、彼女はまるで最初からいなかったように、

消えた。

泡のように。シャボン玉のように。手でしっかりと握っていたはずのものが、開くと何故か無くなっているかのように。

それでも毎晩、彼女の夢を見る。でも夢なんて、本当は見たくない。

彼女といた僅かな時間が夢に侵されていくから。現実が夢に侵食されていくなんて考えもしなかった。

唯一、転送したメールを開く。

『私はあなたの性欲を満たすだけの玩具じゃないから。』

そう、あの時、胸を強く刺した言葉。でも、今では彼女が僕といた確かな証になっていて、愛しいとすら感じてしまう。

『私はあなたの性欲を満たすだけの玩具じゃないから。』

そう思われていたことは、凄く悲しいけれど、そう思わせてしまったのは自分のせいだから、悲しい。

あんなに近づいたのに、遠くなって遠くなって、少しずつ上昇気流にのって、まるで風船のように危うく揺れながら、それでも少しずつ遠くなって、雲の上、もう僕には見えない。君が今生きている現実を、もう僕は見ることすら許されない。背中の黒い翼はぐにゃりと折れてしまった。

僕は僕の今を生きていて、君は僕の知らないところで君の今を生きている。


今日もいつものように駅を降りる。 西口から丸井デパートを右手に見て、エスカレーターを下る。

商店街に入ると、君と行ったダーツバーがある、君と行ったイタリアンがある、君と行ったホルモン屋がある。ズキッとまた胸が傷む。 君はまるで最初からいなかったように消えてしまったけど、当たり前のように、それらはあって、彼らは僕を見返して『ざまぁみろ』って笑うんだ。

胸の痛みが止まらない。少しだけ目を閉じて、心を過去に飛ばしてみる。

君があの時この場所にいた時間まで。

凄く短い映像のフラッシュバックだけど 、あの時君は確かにここにいた。


そして、目を開いて、

もう一度、

もう一度、君にめぐり会いたい、ここで。
あの曲がり角から、ひょっこりと現れないかな。全てを許してくれて、もう一度笑ってくれないかな。ぎこちないお互いの笑顔も、抱きしめられたなら、長い夢も覚めるよ。

そんなことを繰り返しているよ。 dear....

イヤホンからは、 秦基博の『鱗』が流れてる。