闇猫のアムネジア
夢の狭間に生まれた仔猫は、神々からアムネジアと名付けられた。
その姿は、黒猫に蝙蝠の羽、まるで悪魔のよう。
人々の悪夢を食べながら暮らしている。
いつしか仔猫は大人になって、その悪夢を食べる能力を人のために
役立てるように、神々から夢の番人を任せられた。
そして夢猫のアムネジアとして宮殿を与えられた。
アムネジアは、ずっと夢が集まるこの宮殿で過ごしている。
人々の夢を見守りながら暮らしている。
アムネジアは普段は黒い翼のある猫だけれど
人間の良い夢を見つけた時は、夢に入り人間やいろんなものに化けて
その人が夢の中で幸せになれるように演じて悪夢なら食べてしまう。
あるとき人々から賢者と呼ばれる人間がたどりついた。
初めてみる本物の人間に驚いたアムネジアは隠れていたけれど
賢者は1000匹の猫の中から、闇猫を探しだした。
迷路のような、夢の宮殿でそれは奇跡に近かった。
賢者はアムネジアに問いかけた。
なぜ人は夜眠るのか、そして夢を見るのか。
アムネジアもその理由は知らなかったので首を横に振ると
賢者は言った。夢の番人なら知っているはずと。
100億の夢を食べたアムネジアならわかるはず。
アムネジアは考えた。そしてこう答えた。
人の世は幸せばかりではないから、神様がくれたのが
夢を見るという救いなんだと。夢を見て少しでも心が
晴れるようにと、いつもそう願っていると答えた。
賢者は言った。救いならば、なぜ悪夢まで見てしまうのか。
眠るのが怖くなってしまうものまでいることを伝えた。
悪夢はアムネジアが食べているのだけど食べ残しがあるのだ。
でもアムネジアは賢者には答えなかった。
そして賢者にこう言った。
賢者よ、人間はたまには悪夢をみないと夢をみることばかりに
なってしまうのではないか?
賢者は頷いた。たしかに幸せな夢ばかりでは人間はずっと
夢を見続けて堕落してしまうだろう。
賢者は去って行った。
アムネジアは考えた。もしこれ以上人間が増えて悪夢まで
増えてしまったらもう食べきれないと。
今日もアムネジアは悪夢を食べている。
でも最近の人間は悪夢ばかりみていてとても食べ切れない。
人間界は今どうなってしまっているんだろう。
夢猫の宮殿は、食べきれない悪夢でいっぱいになってしまった。
眠れない夜を過ごす人々が溢れかえっている。
アムネジアは今日も嘆いているだろう。