10月に入り、

そのころの私は、
神社に行きたくて、
うずうずしていた。

 

「伊勢神宮に行ってみたいな」

 

天照大神といえば、
伊勢神宮でしょう。

 

なぜか、
天照大神に引き寄せられている感覚があった。

 


 

ネットで検索していると、
夜発バスに乗り、伊勢神宮近くのいろいろな神社を回り、内宮、外宮を参拝し、
夜18時に到着するという
スーパーハードなツアーを見つけた。

 

「行きたい神社だけ行ける!」

 

しかも、
一人参加も多いと書いてある。

 

行きたい気持ちに勝てず、
迷わず、
初の夜行バス、
初の一人旅に申し込んだ。

 


 

でも、
出雲大社にも行ってみたいよね……。

 

そう思って、
そのまま検索していると、
出雲大社と厳島神社を巡る
2泊3日のツアーを発見した。

 

「神在月」というものがあるらしい。

しかも、
11月の終わりから12月の初めまで。

今なら、
まだ間に合う。

 


 

そのとき、
私はチカちゃんを誘ってみよう、
と思っていた。

まだ一度しか会っていないのに。

 

翌日、
二人でご飯を食べる約束をしていたのに、
待ちきれなくて、

「一緒に行かない?」

と、
LINEで誘った。

 

「仕事、休めるか確認してみる。
明日、話そう」

と返事が来た。

 


 

翌日、
レストランでご飯。

 

私が提示した日にちは難しかったらしく、
「こっちの日はどう?」
と言ってくれた。

ちゃんと、
神在月の範囲だった。

「よし!行こう!」

チカちゃんは、
悩むことなく答えてくれた。

 


 

まだ会って2回目なのに、
不思議だね、
と言い合いながら、

 

なぜ、
あのとき私を誘ってくれたのか聞いてみた。

「わかんない」

なぜ、
私も「いいよ」と言ったのか。

それも、
「わかんない」

 


 

話しているうちに、
私とチカちゃんは、
正反対の性格だということに気づいた。

 

チカちゃんは、
明るくてパワフル。
誰とでも話せてしまうタイプ。

病院が大嫌いで、
我慢していたら、
結局、救急車で運ばれて
緊急手術になったこともあるそうだ。

 


 

私は、
静かで、
ほとんどしゃべらない。
人の話を聞いているタイプ。

怖がりだから、
何かあると、
すぐ病院に行く。

 

「陰と陽だな」

と思った。

 


 

まだ、
ちゃんと話したこともなかった二人。

 

チカちゃんの身の上話を聞いた。

 

立派な会社に勤めている旦那さんは
ギャンブル依存症で、
子ども二人を育てながら、
かなりお金で苦労してきたという。

 


 

旅行なんて誘ってよかったのかな。
そんなに大変な人生だったんだ。

 

チカちゃんの気持ちになって考えているうちに、
だんだん、
少し気分が悪くなってきた。

 

話を聞いているあたりから、
左肩が、
凝ったような、
重たいような感じになってきて、

「疲れたな。
帰って、ゆっくりしたいな」

そう思い始めていた。

 


 

でも、
チカちゃんは、
そんな私を笑いの中に連れていった。

 

静かで、
まじめな私は、
今まで、
いじられたことがほとんどなかった。

 

でもチカちゃんは、

平気で私をイジってくる。

ワハハ、とお腹を抱えて笑いながら、
何度目かのトイレに立った。

 


 

鏡を見たとき、
ふと、
思った。

「あ、
私、
やさしい顔してるな」

 


 

席に戻ると、
チカちゃんが言った。

 

「実はさっき、
ルナちゃんが、
すごく疲れた顔してて、
『帰る?』って言おうか
迷ってたの。

今はよさそうだから、
言えるんだけど」

 


 

「!!
そうなの。

さっきまで、
左肩が重くて、
疲れたなって思ってたんだけど、
なぜか、今は平気なの」

 


 

「なんかね、
ルナちゃんの、
目の下のクマのあたりが、
どんどん垂れ下がって見えたの」

そう言っていた。


「それ、
私が6月にカナタさんに出会うまでの
調子がわるかったときの顔と同じ!」
 

私の身に起きている変化を感じ取ってくれたのも

チカちゃんが初めてだった。

 


 

今まで、
一日中おしゃべりしていることは
何度もあった。

 

でも、
私の変化に気づいてくれたのは、
チカちゃんだけだった。

 

「ルナちゃん、
怖い怖い」

と言いながら、
チカちゃん自身も、
感覚の鋭い人だった。

 


 

昔、付き合っていた彼が、
金縛りにあう人だったこと。

 

隣に寝て、
体が触れていると平気だけれど、
片方の足が触れると、
触れている部分だけ金縛りが移り、自分も動けなくなる感じがしたこと。

 


 

自分の部屋の真上が、
大嫌いな旦那さんの部屋で、

「今、
こっち向いて鼻かんでる」

「今、
パソコンやってる」

そんなことが、
わかってしまって、
すごく気持ち悪い、
と言っていたこと。

 


 

給料を、
生活費の袋に分けるときも、

「このお札はこっち。
このお札は、あっち」

と、
お札を見て、そのお札がどこに行くべきかを見極めて使い道ごとに分けている、
という話もしてくれた。

 


 

私が、
最近エンジェルナンバーに
はまっていること。

毎日見た車のナンバーを
ChatGPTに伝えて、
意味を聞いている、
という話をすると、

「最近、
寝ているとき、
いつも同じ時間に目が覚めるの。
2時22分」

と言った。

 


 

その場で、
ChatGPTに聞いてみた。

「いままでの努力が、報われる」

そう書いてあった。

 


 

「チカちゃんも、
十分スピリチュアル強いじゃん!」

と言うと、

「やめて。
ルナちゃんと一緒にしないで。
こわい!」

と、
笑っていた。

 


 

旅行に行くことになったので、
私は、
自分が双極性障害という病気で、
障害者枠で働いていること。

睡眠導入剤を飲んでいること。

最近、
なかなか眠れないこと。

そんな話もした。

 


 

それでもチカちゃんは、
変な顔ひとつせず、
ちゃんと受け止めてくれた。

 


 

気づくと、
夜8時になっていた。

丸一日、おしゃべりして
一緒にいた。

 

それなのに、

「ルナちゃん、
全然気を遣わなくていいし、
ちゃんと目を合わせてくれるんだよ」

と言ってくれた。

 


 

帰り際、
お互いの車の前で、
「また近々会おうね」
と言ったとき、

チカちゃんが、
すっと手を差し出してきた。

 

私の手を握って、
こう言った。

「これで、
今日は眠れるよ」

 


 

なんて、
やさしい人なんだろう。

そう、
心から思った。

 

(つづく)