十六夜にみる夢。

十六夜にみる夢。

ダイスキな小説…作品の備忘録につき、ネタバレ満載!
「良書を読むための条件は、悪書を読まぬことである。人生は短く、時間と力は限りがあるからである。」ショウペンハウエル

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友人の生死を決める衝撃的な現場で霧子が出会った黒ずくめの男。彼は修羅場をよそに、消えるようにいなくなってしまった。後日、霧子は男に再会し、徐々に魅かれていく。

彼の名は椿林太郎。学習障害児の教育に才能を発揮し、本気で世界を変えようと目論む、抜群に優秀な小学校教師。人は彼のことを「神の子」と呼ぶ。

しかし、彼にはある大きな秘密があって、、、。生への根源的な問いを放つ傑作長編。

(裏表紙より)

 

 

小説の内容について触れています!(知りたくない方は、お気を付けて。)

 

一日の休みを使って、女性作家が書かれた作品のように思いながら、ゆっくりと大切に読了。

 

霧子が「死神」だと思った林太郎だが、実はその逆の存在であったことにより救われる。

そして、霧子だけではなく、絶望の淵に立たされていた子供達が、自分の存在を否定することを止め、「自分が好き」と感じとれるようになるまで林太郎は導いていこうとする。

「希望や夢」について語るには、まず自分の未来に目を向けるようになられなければ始まらないし、他者の理解や評価、協力がなければ、求めるものを得ることが難しい世界であるから。

そんな彼を人は「神の子」だと考え、両親は勿論のこと、むーちゃんや今川、唐川悦子は自分に出来ることによって林太郎を支援していく。

純也がその懐で守られていたことを知った時には、涙が出ました。

 

不思議だったのは、「僕達に、その寿命を変える力は与えられていない。」と言う林太郎が、出産をめぐっては、寿命が変わると信じていること。

出産の時期さえ遅らせれば、あすかと霧子は助かり、変えられないはずの寿命は延びる、と。

 

そんな状況で二人が出会い、「色恋に溺れる男女の気持ちがいまひとつ掴めない。そんなことにうつつを抜かし、本来やるべきことを一時中断できるほどに人生は長くない<P213>」というスタンスだった林太郎は、霧子のことを愛していたのか。

傍にいないと淋しいとかいう段階ではなく、心から。

しんちゃんやあすかを救えなかった贖罪の気持ちから、独身を貫くという姿勢を翻意し、霧子を守ろうとしていただけではないのか。

兄と同じように、結婚に別の目的があったのではないか。

白石さんの作品さんにしては珍しく(?)、読者が勝手に想像する余地を残してくれているような気がしました。 

 

思いがけないラストは、「死は決して終わりではない」と語っていた林太郎の言葉の布石をして、霧子が再び生きる世界をより賢明に生きることが出来るなら、読者だって、林太郎の運命は変えることが出来るのではないかと期待出来るもの。

林太郎と霧子には、50年も60年も一緒に生きていってもらいたい。

白石さん、この本を書かれるために一体、どれほど参考文献を勉強されたのだろうかと想いを馳せるほどの重さでした。