「いらっしゃいませー!!」
 
 
入ると元気よく、綺麗なお姉さんが出迎えてくれた。
 
 
「あら、麻里花さんとこの娘さん?」
 
 
麻里花とはお母さんの名前。
 
 
「あ、はい、そうですっ!!」
 
 
「麻里花さんににて綺麗ねー。小麦粉よね?ちょっと待ってて。」
 
 
「あ、はい…。」
 
 
…綺麗なのはお姉さんのほうですよ、全く…。
 
 
「はい、これ小麦粉。」
 
 
「ありがとうございます。」
 
 
「少し重たいけど大丈夫かな?」
 
 
「あ、大丈夫ですっ!!」
 
 
「あらそう?本当に大丈夫?」
 
 
「はいっ!!」
 
 
「じゃあ、気をつけてね♪またいつでもおいでね。」
 
 
「はい♪」
 
 
そんな会話をして店を出た。
 
<9>
 
なんだか長旅になりそうじゃないか?
 
 
「ここって歩いてでも行ける距離なの?」
 
 
「うん、行けるわよ♪」
 
 
じゃあ、歩いて行こう。
 
 
すぐに用意をして私は家を出た。
 
 
用意って言っても、財布と携帯だけなんだけど。
 
 
お母さんに渡された地図を見て、お得意さんを目指す。
 
 
「…まっすぐ行ってー…左に曲がってー…右に曲がってー…まっすぐ………って近っ!!」
 
 
3分もかかってないんじゃないだろうか…。
 
 
まさかこんなに近いとは。
 
 
地図を渡される意味もなかったんじゃない?
 
 
完璧にお母さんになめられてるよ、私…。
 
 
「ってか…可愛いお店。」
 
 
お得意さんの店は、木がモチーフになっていて、ログハウスっぽい。
 
 
「…素敵ー…♪」
 
 
少しテンションが上がって、お店の中へ入った。
 
<8>
 
「嘘ついたって無駄よ~。暇に決まってるでしょ。ちょっとこっち来て~!!」
 
 
…暇だってわかってるなら、始めから聞かなければいいじゃんか。
 
 
仕方なく私は店のほうへ歩いて行く。
 
 
そりゃもう、気怠そうに。
 
 
「何?お母さん。」
 
 
「あっ、ちかちゃん!!小麦粉をお得意さんに取りに行かないといけないんだけど、今ママ手が離せないから、ちかちゃん代わりに取りに行ってくれない?」
 
 
…やっぱりこき使われちゃうんだね。
 
 
まぁ、今本当に暇だし…いっか。
 
 
「…お得意さんって、どこ?」
 
 
「はいこれ、地図♪」
 
 
超笑顔でお母さんは私に大まかな地図が書かれた紙を渡した。
 
 
「結構近いし、そこの建物目立つからすぐわかると思うわ。あ、それとこれも。」
 
 
私の手の平にはもう一枚別の地図が書かれた紙が。
 
 
「何これ?」
 
 
「ちかちゃんが新しく通う高校への地図よ♪ついでに学校も行って来てみなさい。」
 
 
「…はーい。」
 
 
今更あがいたって、お母さんには敵うはずがないので、私は素直に返事をした。
 
<7>
 
午前の内に掃除を終わらせて、今はリビングにあるソファの上で寛ぎ中。
 
 
あれから頑張ったよ、誓さんは。
 
 
誰か褒めてくれー…。
 
 
今時、女子高生が健気に道の掃除だよ?
 
 
自分で言うのもなんやけど、偉いわー。
 
 
そんなことを考えてると、
 
 
「ちかちゃ~んっ!!今暇~!?」
 
 
店のほうからお母さんの声が。
 
 
…絶対こき使われるに決まってる。
 
 
もう、掃除なんて嫌だし。
 
 
「ちっとも暇じゃな~いっ!!」
 
 
そう返事してやった。
 
<6>
 
だがしかし、問題点はまだあった。
 
 
承諾してから気付いたんだけどさ。
 
 
引っ越しする場所を知らなかったの…!!
 
 
今まで私たちが住んでいたのは京都府。
 
 
引っ越ししてきたこの地は東京都。
 
 
なんだか名前は似ているけど…、場所は全然違うっ!!
 
 
離れすぎでしょ、京都府と東京都って。
 
 
…でももう、諦めるしかなかった。
 
 
引っ越しするなら何処だって一緒か、なんて感じで。
 
 
そんなわけで、私は今、見知らぬ東京都で、桜の花びらが散らばっているMarronの前の道を掃除してるんです。
 
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