ANAの機内誌 "翼の王国" が好きで、いつも持ち帰っています。
月末近くなるとやや傷んでいたりすることもあり(図書館の雑誌みたいな・・・)、その度に「いっそ年間購読しようか」と思うのですが、つい忘れてしまい今に至ってます^^

この誌面で目にして知った世界、それをきっかけに買った本、訪れてみた場所などがいくつもあります。
撮影の許されていない場所や、一般公開がされていない場所における貴重な写真も多く、その点も見応えがあります。そうした写真がまた、いかにも控えめかつ自然に配されているのです。

フリーペーパーも含め、読み物は数あれど、こういうスタンスの雑誌はあまりないような気がします。飄々と独り言を呟いているかのような、さらさらとした流れるような空気感を持った雑誌です。
余裕があって、どこか涼しく、寛いだ佇まいを感じます。「我、関せず」というか・・・。

私は、語り手の自意識を見せ付けられるような読み物は苦手です。
抑制の利いていない文章というのはどこか無粋で、また、安定感と信頼性に欠ける印象を受けることもあります。
最近はますます、行間に留まらず本文それ自体からもあふれ出すような過剰な自意識や自己愛に「うへっ・・・」となることが多くなったような気がします・・・。


話を戻して "翼の王国" ですが、今月号には、フリック・コレクションのフェルメールが掲載されています。
画集などの印刷物では、当然ながら「作品だけ」しか見れませんが、当該誌面では、壁にかけられた作品が「壁ととも」に写されています。
なんという贅沢。
邸宅美術館として世界屈指と言われる美術館にかけられた絵画を、このような形で、これほどの "静かな" 臨場感とともに堪能できるとは。
シートの上で、心密かに感嘆の声を上げた私でした。



翼の王国に掲載された美しいフリック邸内の写真に見入りながら、朽木ゆり子著「フェルメール 全点踏破の旅」をゆっくり読み返す。
ゆったりした気分で、フェルメールの世界に思いを馳せる週末の午後です。

フェルメール全点踏破の旅 (集英社新書ヴィジュアル版) (集英社新書ヴィジュアル版)/朽木 ゆり子

¥1,050
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そういえば・・・・私は小学生の頃から、大好きな本を数冊持っていそいそとダイニングテーブルに向かう時が一番幸せでした。
当時は単なる "わくわくと心躍る感じ" としてしか認識していませんでしたが、そこにあったのはきっと「これから思う存分読むぞ」みたいな高揚感でした。
1冊目を読み終えてもまだまだある、準備万端。好きな物語の世界に次々と浸って何時間でも過ごせるぞ、という期待と興奮だったと思います。
何冊も積み上げた本の山をぐぐぐっと左側に押しやって、目の前のスペースを確保し、積み上がった本の上から1冊ずつ取ってそこにゆっくり広げる。

グラスに冷たい牛乳、お皿にクッキー、トレーにおしぼり。いつもそんな感じでした。汚さないようにクッキーを頬張り、柔らかくひんやりとしたタオルに指先を押し付けて拭き、牛乳を飲んで、またその手を拭いてページを捲る。ただ物語に没頭していました。やがてグラスの氷が解けて牛乳の上に水の層ができる。

大好きな時間でした。
あの頃は時間は無限にあったような気がします。
一人で永遠に過ごしていた気がしますが、そんなはずはありません^^
母は何をしていたんでしょう。
そっと、放置しておいてくれたのでしょうか。