アドベンチャー | 「迷ったらGO!」

「迷ったらGO!」

思い立ったらやっちゃえ!的に行き当たりばったりで行動してしまう、いくつになっても落ち着けないベイスターズファンの親父と、カープ命の母親ジュン、そしてなぜかドラゴンズ狂の息子カイが繰り広げる三つ巴の熱き戦いをお送りします。

話は2週間前にさかのぼる。


カイが友達同士で広島から電車で一時間ほど行った、大畠に釣りに行く計画を立てていた。



ところが、遠いからってのと危ないってんで、みんな親や先生に反対され、だれも行く人がいなくなってしまったようだ。


ゲームばっかりやるなって言ったり、遠くへは行くなって言ったり、何して遊びゃあいいんだよ!」


どうにも納得いかないようだ。


ついに、


俺一人で行ってくる!」


と言って次の日曜日、朝4時半に起き、ドラえもんのように着こんで、まだ真っ暗な中を出て行った。


でも、俺らの頃って、小学生の時から電車で1時間以上かかる所に釣りに行ったり、自転車で県外まで出たりってことを平気でしていた。そこで、計画を組み、自分達で考え、判断をして、行動するってことを覚えていった。そして必ず発生するハプニングをみんなで相談しながら解決していったり、そこでリーダーシップをとる人が出てきたり・・・一回行くと、それは大冒険だった。


時代が違うって言われりゃそれまでだけど、自分達だけで考えて行動するってのは、時代関係なくものすごく大事だし、じゃあいつそういったことを身につけるんだ?


カイは2時過ぎに帰ってきた。


「どうだった?」


「釣れなかった・・・」


釣果より、どんな冒険があったか順を追って聞きたかった。


計画していた通り朝一番の電車に乗り、大畠港に着いたけど流れが速くて全然釣れなかったようだ。


「その後、水産加工場に行って・・・」


「な、なんて? 水産加工場?」


良く行く場所で必ず何かは釣れる場所だが、大畠駅からは歩くと1時間以上はかかる。


「どうやって行ったんだ?」


「駅の前にあるセブンイレブンの駐車場にいて、出てきた人に『大島の方に行きますか?』って声をかけた」


「まてまてまてまて・・・・ヒッチハイク?」


「そう」


な、なんじゃそりゃ。


「えぇ!?それで・・・大丈夫だったのか?いや、その人が乗っけてくれたの? え、帰りはどうしたんだ?」


こ、こっちが動揺してきたぞ。落ち着いて順を追って聞こう。


「その人は大島には行かないって言われたけど、それを聞いていた隣のおじさんが乗っけていってくれた」


水産加工場には行けたけど、風が強いのとド干潮で釣りにならなかったようだ。キスを1匹釣ったけど持って帰ってもしょうがないから、そこで釣りしていた夫婦にあげようと声をかけたら、逆に「一人?」「どうやってきたの?」と話しているうちに仲良くなり、駅まで送ってもらったらしい。


「・・・・・・・・・・・」


しばらく唖然・・・。予想以上の大冒険だったようだ。


「カイ、俺らに連れて行ってもらうのと全然違うだろ」


「うん」


「楽しかったか?」


「楽しかった!」


ものすごく満足した、達成感に満ち溢れた表情だ。


ヒッチハイクは褒められたことじゃない。だけど、いくら子供に乗せていってほしいと言われても、言葉使いや態度がしっかりしていないと乗せていってはくれないだろう。その点では、ちゃんと敬語で大人としての受け答えをしていたんだろう。


そして、誰でも声をかけたわけじゃなさそうだ。危険な目に合うことだってあることを注意すると、「声をかけた人は老夫婦で、乗せてくれた人は軽トラックだったから地元だから大丈夫だろうと思った」と自分で分析し判断したらしい。


「そのおじいさんは柳井に住み、実家の祝島に船を持っているようで『今度来る時は連絡しなさい』って住所をくれたから俺もわたした」と車の中での会話をおしえてくれた。


住所? そんなの簡単に教えちゃ・・・ま、今度言えばいいか。今日は冒険の余韻に浸らせてあげよう。

・・・・・それにしたって・・・・・俺だって中学でヒッチハイクなんてしなかったぞ。


その夜、電話が鳴った。相手は軽トラックで乗せていってくれたおじいちゃん。


もう、ちゃんと帰れたか心配で心配で・・・


家族で今日の話になったんだろう。心配して電話をくれた。


「ハイ・・・ハイ・・・ちゃんと帰れました。ありがとうございました」


と、今まで見たことないようなハキハキした敬語でしゃべってる。

そう、親のいないところで子供は育つ。

電話を切ったカイトが言った。


「今度はソメ(友達)と行こう!」


友達とヒッチハイクなんか絶対するな!!!!大問題になるぞ!!!