
五月も半ばを迎え、過ごしやすい季節になってきた。日中は暑いくらいである。
そのせいという訳ではないが、最近睡眠時間が異常に増えている。休日となると、平気で半日以上は布団のなかにいる。今なら、このまま永久の眠りにつけそうな気もするが、実際のところはまだまだ先は長そうである。
浅い眠りを繰り返すなかで、過去に出会った人々に再会したり、自分でも思いも留めない場面が再構築されたりするのであるが、夢だけに何の脈絡もないものが大半である。起きて一時間もすれば、みな忘れてしまう。
誰しもあの時こうしていればという経験はあると思うが、ごくたまに私にとってのあの時が現実に近いかたちで再現されることがある。その都度、うまくやってやろうと操作を試みるが、夢においてもメガネは一向に言うことをきいて呉れない。どうすることも出来ぬまま、結末にも辿り着けず、苦い思いで目を覚ますことになる。
その日も、私にとって苦しい一日であった。
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1パチで勝って勝って勝ちまくって温泉旅行をゲットするという趣旨の、メガネとアゴルの「ロードオブザスプリング」は、目下一回戦を終了した時点で軽く往復の電車賃をいかれてしまっている。
今回の実戦では、背水の陣を敷いて、並んでミドルタイプに挑戦する。前日からの下見もあり、二台ともそこそこ回るのは承知の上。実戦の地は、駅前等価の低玉専門店D店。
ホールに入るなり、幻覚と幻聴でガクブルしているアゴルを横目に、私は狙いの北斗の拳・百裂に一度は腰を下ろすも、近くの神獣王が気にかかる。私の危うい視線に気が付いたのか、どこからか出現した巨大な手のひらが私の首根っこを押さえつけ、身動きが取れなくなる。
(心配しなさんな。これはわしのちょっとした茶目っ気でやんすよ。)
アゴルは知らない。この日、私がシャワーを浴びてすぐ、密かに「殺活孔」(自らの残命を縮めて生を呼び覚ます秘孔)を突いていたことを。あの時、彼の瞳に映し出された私の虚ろな表情は、決戦を前にした男の悲愴な覚悟の一端であったのだ。
御覧頂こう、私の戦いを。
CR北斗の拳・百裂
53 ラオウ疑似3→赤→ユリア→有無
→緑→外れ
104 ラオウ疑似3→白→拳→無無
→緑→外れ
322 ラオウ疑似2→白→夢想→無
→緑→外れ
323 ユダ疑似2→白→無→緑→16R
(23) ラオウ→16R
(5) ユダ→強→復活→16R
(1) トキ→6R
(22) サウ→弱→6R
(20) シン赤→弱→6R
(23) ラオウ→16R
(24) サウ赤→中→6R
抜け 時短(100)
193 赤バイク→疑似2→キリンマント→カウント2→ラオウ→夢想→有→緑→外れ
277 ラオウステップ最終→ラオウ→夢想→無→緑→復活→16R
(21) ラオウ→16R
(24) サウ→強→復活→16R
(7) アミバ→弱→16R
(5) ユダ赤→強→6R
(8) ジャギ→弱→16R
(5) ユダ→弱→復活→16R
(96) 時短中→トキ→ラオウ→16R
(18) サウ→中→復活→16R
抜け 時短(100)
237 2R→抜け
75 2R
9 2R
8 2R
32 ジャギ→弱→16R
抜け 時短(67)
100 止め
総回転数 記録ミス
大当り 20(16R:11,6R:5,2R:4)
投資 7K
獲得出玉 18000発
秘孔を突いていたおかげであろう。最初の初当りまでは気を揉んだが、その後は順調に出玉を伸ばすことができた。道中、ラオウとの最強リーチに対し「剛の拳」をもって立ち向かうも、ことごとく外すあたり話の本筋と合っていて面白い。
そもそも「殺活孔」なる秘孔は何処にあったかしら、そんな疑問はさておいて、隣のアゴルに目を向ける。初当りは軽いようだが全く連荘しない苦しい展開に、きっと奴さんの頭の中は、湯けむり立ちこむ桃源郷から悪鬼羅刹蠢く地獄絵図と化していることだろう。その焦点の合わない視線は、盤面、液晶を通り越し遥か先の天竺までバルーントリップ。彼の言葉を拝借すると、こういうことになる。
元々が他人に対していい格好をしたがる性分の私は、絶望の淵を彷徨うアゴルに蜘蛛の糸を垂らすことに決めた。食い付くかどうかは、彼次第である。
ところが予想に反し、尚もうわ言を洩らし続けるアゴル。今度は私がその首根っこを引き抜くかたちで、その日の実戦は各々五百円負けで終了となるはずであった。
そう、なるはずであったのだ。
お互いの精算を済ませ、帰宅の途に着く私達。とりあえずは次に繋がったと
胸を撫で下ろす私の思いとは裏腹に、隣を歩くアゴルの横顔にはさっきまでとは別人の如く生気がみなぎっている。あろうことか、今日の負けを取り戻すべく、もう一勝負行こうと
言ってきかない。
(今ひとつ乗り気がしない。もうここで洗うべきじゃないのかしら。)
先に帰るという言葉を何度か飲み込む内に、お馴染みのN店が迫ってくる。そのまま素通り出来るわけもなく、敢えなくご入店。
空き台があれば並んで打とうと話していた北斗の拳・覇者は一台のみの空席状況。アゴルは今すぐ合体したい、とアクエリオンに早々と腰を落ち着ける。私は着地点が分からないまま、覇者という名の最後のチケットを握りしめ、天に向かって離陸した。
殺活孔を突いたといっても、右胸部にだらしなく生えた無駄毛をプチっとやっただけである。百裂でのヒキは鳴りを潜め、液晶にはほぼ何も波風が立たないまま、あっという間に五千円が消えてしまった。
私は帰宅の旨をアゴルに告げ、一度も空を見上げることなく巣に戻った。
(ああ、やってしまった。分かっていたはずではないか。何も成長していない…)
月並みな言葉で表現するなら、限りない自己嫌悪である。
その夜、勝負を終えたアゴルが我が家を訪れた。まだ傷心から立ち直っていない私の耳に、彼の言葉は響かなかった。二万発出したという台詞が微かだが聞こえ、尚更私の心は沈み込んだ。素っ気ない態度をとっていると、いつの間にかアゴルは姿を消した。
我、器の小さき男である。
後日、出勤前にふとアゴルが現れた。「この前の投資分あげる」と言って、手には五千円札が握られていた。
私は眼の前に突如現れた神の化身アゴル先生に正対して両手を擦りながら、
「マジで!?マジで!?超感謝!アゴル先生超感謝!」
と素早くその有難い紙切れを頂戴したのであった。おかげで、取戻したい過去のリストから無事あの一日が消滅するに至った。
我、何とも現金な人間であろう。
藤九
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