潤くんが出演した、NODA MAP 第27回公演「正三角関係」を観劇してきました。


自分用記録。ネタバレあります。


★セット

ステージ奥に坂道(下手→上手)、その壁面は、火薬箱がしまわれている。劇中は、法廷の証言台や場面に応じてソファなど。また、粘着テープをキャストが持ったり体に巻き付けたりなどして、リングや仕切り等を表現。


★あらすじ

「カラマーゾフの兄弟」の設定がもとになっている。時代は戦時下、長崎に暮らす唐松族の3兄弟(富太郎(潤くん)・威蕃(イワン・永山瑛太ん)・在良(アリヨシ・長澤まさみちゃん)。

父の兵頭(竹中直人さん)が殺され、富太郎はその疑いをかけられる。

法廷で、兄弟や唐松家の使用人の証言とそれを回想するシーンを繰り返しながら、事件の真相へ近付いていく。その中で、兵頭と富太郎が同じ女性(グルーシェニカ・長澤さん二役)に想いをよせていた可能性がでてくる。

女性関係のもつれからの犯行か?となるが、グルーシェニカは、ロシア兵に想いを寄せていた。


裁判は、たびたび空襲警報が鳴り中断されるが、キリシタンのいる長崎は、いつも素通りだった。

やがて、戦争のために富太郎の火薬は軍にもっていかれてしまう。

そして、物理学者のイワンは新型爆弾の開発に関わっていく。イワンの研究所では、この新型爆弾にどう火をつけたらよいか悩んでいた。イワンは、花火師である富太郎を上司らに推薦するが、罪人になる可能性があるため、上司らは躊躇っていた。


しかし、新型の花火と偽って富太郎に火の付け方を訊ねたところ、的確な答えが返ってきた。

そして彼は無罪となる。(ちなみに、兵頭殺害の犯人は使用人だったが、富太郎は兵頭宅を事件の夜に訪れていて、出て行こうとするところを追いかけられて、お手伝いさんを殴っていた傷害罪は認めていた)


無罪になった富太郎だったが、新型花火ではなく爆弾ではないかと気付く。イワンは、「燃料にウ

ランが必要で、岡山にある唐松家の鉱山にとりに行ってほしい」と富太郎に頼む。自分も翌週には合流するから と言って。


旅立ちの日は8/9。

富太郎が町を出た直後、新型爆弾が長崎に投下された。イワンも、町が好きだから残ると言ったアリヨシも、町の人々も皆亡くなり、生き残ったのは富太郎と、郵便屋の少年(女性が演じていたけど、かの有名な写真のトレースだとしたら役柄は少年かな?)のみ。


ラストシーンは、焼け野原となった町で、アリヨシの遺体(ほぼ灰になっていたが、聖職者のため、もっていたロザリオの残がいで判別)を見つけた富太郎の独白。

独白の途中で、幼い子を背負った郵便屋の少年が呆然と出てくる。(少年は劇中から赤ちゃんの人形をおぶっていて、ラストはその人形の首が折れていて、亡くなっていることがわかる。教科書とかで見たことのある、米国の写真家が実際に長崎で撮った少年の写真を模していると思われる)


火薬をもっていかれて、しかも火薬は大切な人たちを失う手段に使われてしまって、今は無理だけど、いつか、人々が同時に空を見上げるときは、平和であって、その空に花火を上げたいと誓う。終演。


★カーテンコール

ラスト後、潤くんと少年役のキャストで一礼、その後他のキャストたちがラストシーンで亡くなった設定のところから復活して、全員で何度か。

最後は、キャスト退場後、演出・主催・出演の野田さんが、一人残って一礼。


★感想

・最初は、笑えるセリフも多かったが、後半、イワンが原爆の開発に携わり始める辺りから息をのむ展開。富太郎は、原爆に火をつけるために無罪になったが、本来、火薬をそんな風に使いたくなかったはず。その辺りの富太郎の葛藤がうかがえる 。


・オープニングで、3兄弟がそれぞれの夢を語るが、クライマックスでも同じシーンがある。後半では、時代にのまれて、その夢とは違う方に行ってしまっている3人のやるせなさが見える。


・長澤まさみちゃんがアリヨシとグルーシェンカ

の二役。早替えも役の切替も圧巻。


・場面切替で多用される粘着テープの可能性がすごい。ラストの町がなくなるシーンは、スローでキャストたちが倒れていき、黒い布でおおわれていく。この布の使い方も圧巻。何が起きたかわかっている場面なのに、スローモーションと布の演出が美しくて見入ってしまった。


・潤くんは、身のこなしも軽やか、セリフも舞台仕様の発声で、富太郎のまっすぐさがとても現れていた。


・結末は重くてつらいものだけど、後味は、沈みすぎていなくて不思議な感覚だった。