著作権売却話で5億円を詐取したとして逮捕された音楽プロデューサー小室哲哉容疑者(49)が、譲渡済みで売却できない全806曲のうち、約300曲の著作権を自らが役員を務める2つの関連会社に二重譲渡していたことが5日、大阪地検特捜部の調べで分かった。同容疑者らはこの事実を隠し、兵庫県の投資家男性には「三重譲渡」を持ち掛けていた。
また300曲のうち、ヒット曲を含む計26曲の権利は関連2社が所有していると文化庁に登録。譲渡先と争いになっても、小室容疑者側が優先権を主張できるようにしていた。特捜部は、同容疑者らが一般になじみの薄い仕組みを悪用したとみて、さらに調べている。(2008/11/05-05:12)
小室容疑者、300曲の著作権を既に二重譲渡
音楽著作権の売却話を巡る詐欺事件で大阪地検特捜部に逮捕された音楽プロデューサー・小室哲哉容疑者(49)が、音楽プロモーション会社など2社から計2億4000万円の借金をし、その「代物弁済」として、音楽出版社に譲渡していた806曲の著作権のうち約300曲を2社に二重譲渡していたことがわかった。
事件の被害者である兵庫県芦屋市の会社社長(48)への売却話は「三重譲渡」にあたることになる。
2社は、音楽プロモーション会社「ティーケートラックス」(東京都中央区)と、小室容疑者が取締役を務めるイベント企画運営会社「トライバルキックス」(東京都港区)。ティーケートラックスは、小室容疑者の高校時代の同級生が1991年に設立した。
捜査関係者などによると、小室容疑者はティーケートラックスには約2億円、トライバルキックスには約4000万円の借金があったが、ティーケートラックスには2005年に「CAN YOU CELEBRATE?」など主要な約290曲、トライバルキックスには06年に「DEPARTURES」など12曲の著作権をそれぞれ譲渡し、返済に代えたという。
約300曲はすでに数十社の音楽出版社に譲渡されていたが、ティーケートラックスは05年秋以降に290曲のうち14曲を、トライバルキックスは12曲すべてをそれぞれ文化庁に登録。小室容疑者が社長に806曲の著作権売却を持ちかけたのは06年7月で、大半がすでに二重譲渡の状態にあったことになる。しかし、特捜部の発表によると、小室容疑者は売却話の際、社長に対し、「僕は音楽出版社から完全に独立していますから、僕の過去の曲の著作権については、音楽出版社との間でも、全部、僕の手元に残しておくという契約になっています」などとうそをついていたという。
社説:小室容疑者逮捕 青春の夢を壊した罪は重い
数多くのヒット曲を生み出し、日本のポップス界に一時代を築いた音楽プロデューサーの小室哲哉容疑者が、著作権譲渡を名目にした詐欺容疑で大阪地検特捜部に逮捕された。「小室サウンド」とともに青春時代を過ごした世代を中心に衝撃は大きい。
小室容疑者は1990年代からシンセサイザーを多用して作曲、作詞した曲を提供し、人気アーティストを育ててきた。
華原朋美さんの「I’m proud」や安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」は大ヒットし、いまもカラオケの定番になっている。関係したCDの総売り上げは1億7000万枚以上、全盛期の年間収入は20億円以上と推定される。
ところが、近年はヒット曲に恵まれず、アジアでの音楽関連事業の失敗や派手な私生活で巨額の負債を抱え、海外に保有する不動産を処分するなど困窮していたという。
そのため、全作品の著作権を自分が保有しており、それを10億円で譲渡するという話を投資家に持ちかけた。代金の一部として5億円を受け取り、民事訴訟で全額返済などの条件で和解が成立したのに、返済していなかった。
実際には、小室容疑者の著作権は既に音楽出版社に譲渡され、日本音楽著作権協会が管理していた。小室容疑者には、音楽出版社などから年間約2億円が支払われていた。
小室容疑者は容疑事実を認めている。著作権は文化庁に任意で登録する制度があるが、音楽業界では登録していないケースがほとんどだ。自分の知名度に加えて、制度の死角や業界の慣行を悪用したと批判されてもやむを得まい。
デジタル社会化が進み、著作物をネット上で活用する新しいビジネスが生まれている。今回の事件は、著作権についての意識向上や登録制度の周知、明確化といった著作権ビジネス時代の課題を浮き彫りにしたともいえる。
なにより、罪が重いのは「小室サウンド」に共感した同世代のあこがれや、小室容疑者に続こうとした若者たちの夢を、ものの見事にぶち壊したことだ。
音楽の才能とチャンスさえあれば、だれでも成功をつかむことができる。小室容疑者自身が体現した「ジャパニーズ・ドリーム」は泡のように消えた。
著作権は知的創造の成果である。創造性を何より大切にすべき小室容疑者が著作権と芸術活動をおとしめた。
頂点からの転落は本人の責任だ。だが、下積み生活に耐えてひのき舞台を目指す若者たちに、同じ失敗を繰り返させてはならない。
巨額の金がなぜ、どこに消えたのか、食い物にした人物はいないのか。謎の残る事件の背景を、きちんと明らかにしていくことも欠かせない。
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エイベックス・グループ・ホールディングスは、アーティストの小室哲哉の逮捕を受けて、小室容疑者が所属する「globe」関連の着うた、および着うたフルなどの楽曲を配信停止することを決めた。 エイベックスでは、小室容疑者逮捕の報道を受けて、「逮捕されるという事態が生じたことは大変に遺憾。今後の捜査の行方を注意深く見守りたい」とのコメントを発表。同社契約アーティストで同容疑者がメンバーとして所属する「globe」の楽曲、および「globe featuring~」名義の楽曲の音楽配信を停止することを決めた。発売を予定していた音楽CDの発売も中止となる。 携帯電話向けでは、着メロ/着うた/着うたフル/着ムービー/着ボイス/ビデオクリップ/リングバックトーンの各楽曲が配信停止の対象となる。「レコ直♪」(レーベルモバイル)や「music.jp」(MTI)、「dwango.jp」(ドワンゴ)といった大手の携帯向け楽曲配信サイトでは、エイベックスからの要請を受けて、すでに該当する楽曲の配信が停止されている。 多くのアーティストに楽曲を提供し、プロデュースを行ってきた小室容疑者。同容疑者が関係する楽曲は、携帯電話向けに配信されているものだけでも相当数に及ぶ。音楽配信各サイトでは、これらの楽曲については配信を行っている。今後もレーベルの意向に合わせて対応するとしている。 |
小室容疑者、うっすら涙 背中丸め、わずかに苦笑数々のミリオンセラー曲を手掛けた“天才”ミュージシャンの目にうっすら涙が浮かんでいた。4日午前、詐欺容疑で大阪地検に逮捕された音楽プロデューサー小室哲哉容疑者(49)。背中を丸めて力なく下を向き、一斉に光るフラッシュに少し苦笑したような表情を浮かべ、大阪地検の庁舎へ。一時代を築いた面影は見られなかった。 小室容疑者は、白のTシャツに黒のパーカ姿。午前7時50分ごろ、大阪市内のホテルからワンボックス車に乗り込み、地検係官に両脇を挟まれるように後部座席に座った。やつれた様子で、目にはうっすら涙も。さかんに髪をいじり、悔しそうに唇をかんだ。 約20分後、100人以上の報道陣が集まり、ヘリコプターのごう音が鳴り響くなか大阪地検に到着。一斉にフラッシュが光り、報道陣が車に駆け寄ると、小室容疑者は垂れた前髪越しに軽く左右を見回し、口元を少しだけ緩めた。 |
“天才”音楽家、目に涙 「才能惜しい」の声も | '08/11/4 |
数々のミリオンセラーを手掛けた“天才”ミュージシャンの目に、うっすらと涙が浮かんだ。四日、詐欺容疑で大阪地検に逮捕された音楽プロデューサー 小室容疑者は、白のTシャツに黒のパーカ姿。午前七時五十分ごろ、大阪市内のホテルからワンボックス車に乗り込み、地検係官に両脇を挟まれるように後部座席に座った。やつれた様子で、目にはうっすら涙も。さかんに髪をいじり、悔しそうに唇をかんだ。 約二十分後、百人以上の報道陣が集まり、ヘリコプターの音が鳴り響くなか大阪地検に到着。小室容疑者は背中を丸めてうつむき、一斉に光るフラッシュに少し苦笑したような表情を浮かべて地検庁舎に入った。 東京・西新宿のオフィス街。カラオケでよく歌ったという埼玉県熊谷市の会社員 自宅兼事務所が入る東京・西麻布の高級マンションには午前八時すぎ、地検係官ら十二人が家宅捜索に入った。近くで働く女性(55)は「ちやほやされて、地に足が着かなくなっていたのでは」と切り捨てた。 「小室哲哉記念ホール」がある東京都国分寺市の母校・早稲田実業の職員は「二年前は甲子園優勝で注目された。久しぶりの話題がこんな話とは」と嘆いた。 大分県臼杵市で料亭を営む、小室容疑者の妻KCO(音楽グループ「globe」のKEIKO)さんの母(61)は十月、金銭トラブルについて「寝耳に水だった」と困惑した表情で話していた。 |