20130821小説:ドライブ2


クミは、#14、フェアリーズのシューティング・ガードである。
普段はおとなしい性格で、化粧はファンデのみと薄い紅を引く程度。

車はかわいい物、と言うことで、一産のマーチィンに決めた。店員いわく、(かわいくて燃費もいいですよ)、と勧めてくれた。燃費が何かは分らなかったが、まぁ、店員がいい、と言うのだから間違いないだろう、と思った。

あるときに、ドライブに行ったら、ガソリンがなくなっていることに気づいた。近場のスタンドに飛び込んだ。ガソリンを満タンにすると、店員がティッシュボックスをくれた。他のお客が、(今日はティッシュボックスサービスデーですか?)とたずねた。店員が(あのお客様は上得意様なので)と答えた。
彼女だけ特別サービスだったわけだ。スタンドを店員に誘導されて出ると、彼女は思った。(私がかわいいからしょうがないのさ)

あるとき、点検で、タイヤの溝がそろそろ限界だよ。と言われた。見てみると所々スリップサインが見える。近場のタイヤさんでタイヤ4本8800円、と言うのがあった。店員がいった。(お客さんなら800円引いて8000円でいいです。どうですか?)即座にOKした。
知っている人は知っているが、タイヤ交換には廃タイヤ引取りで1本400円かかる。4本だと1200円だ。またバランス取りを行うと、重さによらず、1箇所200円だ。ところが、会計の段階で、8000円です。と言われた。え?廃タイヤとバランス取りの費用が入っていない。更に消費税もだ。8000円払ってお店を出ようとしたとき、他のお客さんが、店員に言われていた。(廃タイヤが1本400円で、バランス取りが1箇所200円です。後それに消費税がかかるんですよ。)やっぱとるんだ。いったい何が起こったんだ。結局、かわいいというだけで、ここまでサービスされるなんてありえない。
(ま、私がかわいいからしょうがないのさ)

また、こういうこともあった。がらがらまわすくじ引きがある。彼女の番がやってきた。一周、時計回りにゆっくりまわした。出てきたのは白だったが、何故だが赤い玉が混じった。
カラン、カラン、カラン。店員が言った。(おめでとうございます、2等です。)店員がポケットの中から、赤い玉をとりだし、左手の親指のつめでタイミングよくはじき、あたかも赤い玉を引いたかのように見せたのだ。定員が続けて、(じゃー2等の景品と、4等の景品をおまけにつけます)
なんで2等のくじにさらに4等がもらえるんだ?しかもいんちき、だ。お店を出て、彼女はつぶやいた。(ま、私がかわいいからしょうがないのさ)

チームでもファンからの贈り物は1、2を争うほど人気が高い。食べ物関係は、チームメイトとよく分け合ったが、たまにメッセージカードが入っていたよ、と届けてもらった。いろいろもらったが、もらってうれしいもの、うれしくないものとある。食べ物はいいとして、小物や化粧品、香水と、ありとあらゆるものが送られてくる。とりあえず1ヶ月くらいとっておいてその後処分した。

ファンレターも多かった。最初は丁寧にとっておいたが、そのうち多すぎて、ダンボール箱4箱目に突入した。中でも、気に入った物は宝物状態になっていった。(ま、これも私がかわいいからしょうがないのさ)
私もこういう彼女が欲しいものだ。おそらく、生涯の経済効果はいくばかり、だろうか?嫁にするならこういう人をもらいなさい。

実際、ファンレターをもらって、結構勇気付けられた。よし、もっと、がんばろう、と。


実家に帰ると、母が出迎えてくれる。父は(早く婿の顔が見たいものだ。彼氏はいるのか?)と聞かれて、(いない)と答えると、母が、(今は好きなことを十分しなさい。後悔しないように、ね。)と後押ししてくれる。そういえば、あまり夫婦げんかしているの、見たことないな。


バスケの練習は休みが週に1回あるだけ。たまに2回のときもあるが。比較的練習はハードだった。体を壊さないように、ストレッチや、コンディション作りには苦労している。ポジションはスタメンをはることもあるが、その時のコンディションと、HC(ヘッドコーチ)の気分で決まる。
比較的貧血気味のため、スロースターターではあるが、ゲームまでにきっちり仕上げてきた。おかげで、全日本、ナショナルチームにも選出された。


今シーズンの開幕は遅い。相手はオヨタ、バンビーノ、である。そういえば、いつも接戦になるのに勝っていない相手である。会場は岡崎。どちらもホームチームのため、会場には多くの人が詰め掛けている。両翼はピンク色のバンビーノと、濃い青のフェアリーズで染まった。

試合は、2時からだったが、朝練習と自主調整の感じではそんなに悪くはなかった。試合開始1時間前に会場入りした。


開会式と、岡崎市長の挨拶、バスケットボール連盟会長代行挨拶、地元出身選手、花束贈呈、そして各チームに三ケ日みかんが贈呈された。選手紹介、審判紹介が終わり、選手のウォームアップが始まる。

試合3分前、チームブリィーフィングがあり、スタメンを外れた。とにかく、開幕なので、スタートダッシュをかける、とのことだった。

さあ、1Q、ティップ・オフ。立ち上がりは一進一退だったが、徐々に離された。サマーキャンプでも好調の#2、新人の#3、#24が絶好調だった。1Q終わって11対20。


2Qに出番が来た。1Q終わっての指示は、逆転、その一言だ。そのために投入された。司令塔から指が3本出された。更に、キーコード。(えっ?3P、で攻めるってこと?ドライブじゃないんだ)開始早々、攻撃が回ってきた。ゾーンの中でパスをまわして、ボールが来た。さて、しかけるか。ドリブルをしながらディフェンスを引き付けて、3Pラインまで下がる。高速ドライブ、と見せかけて、ディフェンスを下がらせて、バックステップ。3Pショット!!

あ、外れた。今日、初ゲームだし、まだ、ボールの感じが手になじんでない感じだ。また、オフェンスのチャンス。キーコードが発行された。(もう一回?)了解。さっきと同じようにディフェンスを引き付けて、3P!!決まった。観客から声がかかる。(ナイス、クミ!!)その後も、何度がキーコードが発行され、2Qは3Pを3本決めた。2Q終わって29-30。


ハーフタイムは、両チームのチアによる、ハーフタイムショウだ。
ハーフタイムショウが終わって、シュート練習をしていると、ヘッドコーチに呼ばれた。次の3Qの指示だ。(はい、分りました)そういって、シュート練習に戻った。

3Q開始。ボール・インはオヨタから。相手のボールをカットして早くもチャンスが来た。マッチアップの相手が変わっていた。先ほどベンチで2Qの様子を窺がっていた#1だ。司令塔から指が3本立てられ、さらに追加のキーコードが発行された。(やっぱ、私はこうでなくちゃ。)パス回しから、ボールが回ってきた。さーて、仕掛けるか。ドリブルをしながら、先ほどと同じように、ディフェンスを引き付けて、バックステップ。と同時にディフェンスが前に出てきた。チャンス!!。フェイントもいらなかった。一気に高速ドライブで抜き去り、レイアップ!!ゴール!!アナウンサーが叫ぶ、(ナイシュー、クミ!!)

これよこれ!!、やっぱ私には高速ドライブがあってる、ドライブ大好き!!)後は相手を手玉に取る、かのようだった。

終わって見れば、72-68。なんか久々に勝った気がする。ゲーム後の、礼をして、仲間と喜び合い、シャワー室でシャワーを浴びた。着替えて、バスに乗ろうとすると、まずサイン攻め。次に、プレゼント。なんか今日はまた多い気がする。(ま、私だし、かわいいからしょうがない、か)

バスに乗り込んで、マネージャーにスタッツ(成績表のこと)を見せてもらった。あ、アシストが3つもある。気づかなかったなぁ。

ずり落ちる、ふちなし眼鏡を右手で治しながら、そこには、かわいい女の子が座っていた。


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本作品は空想小説です。実際の個人や団体とはなんら関係がありません。
追記:かんな、ちょっとねたを使いました。よろしく。
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