小説:ドライブ
リサはバスケプレーヤである。身長172cmとあまり大きくはないが、チーム・ジェリーズの#4、ポジション・ガードのエースである。
そのリサに彼氏が出来た。それは、2013年の開幕戦で、レッドイーグルスとのアウェイ戦で、苦戦したものの勝利した。
出会いは突然に、である。試合が終わって、サポーター、ブースターとの交流をしているときだ。一人の青年が近づいてきた。
「あのう、、リサさんですね?えっと、ファンです。あのう、もしよかったら、これ、受け取ってください。」そういって小さな箱を渡した。
「あ、ありがとう。」「明日も応援します。がんばってください。」「あ、ありがとうございます。がんばります。」
そういうとリサは、チームの仲間に合流した。バスでホテルに移動するためだ。
ホテルについて、温泉に入って食事、チームブリーフィングが終わると暇になった。彼は何をくれたんだろう?と箱の中身を空けた。小さな香水が入っていた。匂いは好みではなかったが、嫌いな感じではなかったので満足した。中にメッセージカードが入っていた。
(試合、がんばってください。応援しています。)あと、携帯番号と、メールアドレスがあった。携帯の番号は飛ばしたが、暇だったため、メールを返した。(素敵な香水、ありがとうございます。気に入っています。明日も試合がんばります。応援よろしくお願いします。)と送った。
しばらくして返事がきた。(気に入っていただけて光栄です。明日も応援、がんばります。もし、ご迷惑でなければお付き合い願えますか?)
(OKです。明日が早いのでこれで失礼します。)
そういうやり取りが行われ、二人は付き合うことになった。
次の日、昨日とは会場が違う。そして朝は早い。食事が終わると、8時半から練習。試合は14時からだが10時まで調整練習。11時からちょっと早めの昼食だ。会場には一時間前に入る。先日、勝利したため、会社の上役がきていた。会社のチームではあるが、社員はバスケットと言うものに興味がないのか、会社からの応援は少ない。主に応援は社外の人が多く、インターネットや会場で知り合った人で交流しながら応援するスタイルだ。
対戦相手は、地元と言うこともあり、また、会社から応援が多く駆けつけていた。PAという音響機器もあって応援も派手だった。かたや、ジェリーズは、というと、遠征時にPAはなし。最近、応援クラブらしきものが出来て、JFC(ジェリーズ・ファン・クラブ)の応援幕が張られるようになった。応援もPAがないので肉声のみ。ハリセンだけは会社の方で用意してくれていたので、「GO!GO!ジェリーズ」パンパン、と手作りの応援だった。
試合は一進一退。好ゲームだったが、負けた。リサは試合後、出待ちの彼を探したが見つからなかった。明日は月曜日。仕事なのだ。
付き合い始めて1月がたった頃、彼からメールが来た。(水曜日に有給を取りました。どこかへ出かけませんか?)(OKです。場所はどこでもいいです。お任せします。)水曜日は練習が休みになっている。何でも筋肉の超回復に3日かかるためだそうだ。場所はなんとなくだが、岐阜に決めた。
当日、彼の車を見て驚いた。(レンタカーですか?)(いや、買ったんだ。スーパーローン、だけどね)。車はポルシェ、だった。以前はオンダ社のコードに乗っていたが、燃費はいいものの飽きてしまった。もっと自分らしいものを、と言うことでポルシェになった。
ディラーでは散々にいわれた。
「お客さん、こういうローンの組み方はやめてくださいね。」。毎月10万円、15年ローンである。俺はほしくて買ったんだ、と、何度も自分に言い聞かせた。1000Km点検に出して驚いた。もう、ディーラーでオイル交換はできないな、と。気合と根性でお金を払った。
デートは順長に進み、秋の紅葉の終わりを告げていた。帰りにふらりとホテルに寄った。
あれ?俺はいったい何をしているんだろう?えっと、彼女とホテルに入って、それから、キスをして、エッチして、えっと気がついたら終わっていて、それから、寝ちゃったんだ。
やっぱ、緊張してたんだな、俺って。初デート、初キッス、初エッチ???あれ??記念のエッチの記憶がない!!ま、夢中だったから無理ないか。となりではホントに無邪気に寝ているな。寝顔がこんなにかわいいなんて。さてと、トイレに行ってまた寝よう。
リサはふと目が覚めた。あれ?ここはどこ?記憶をたどり始める。彼とデートに来て、香水も彼のくれたものをつけて、一応スター選手だから変装して、それから車に乗って、ホテルに入って、、、エーと、キスをして、、あー、その後の記憶がない!!下着も慎重に選んできたのに。初エッチは痛いものだというけれど記憶にない!!まてよ、確か雑誌に、スポーツ選手の場合は痛くないとか書いてあったような、でも経験できてない!!それより避妊!!どーすんの?出来ちゃったら。まだ、シーズン途中だって言うのに。まったく無邪気な顔して寝てんだから、起きたらとっちめてやる。さて、トイレ行ったらもう一眠りしよ。
普段、練習の合間に昼寝をしているリサにとって睡眠は生活の一部だったのだ。帰りの車の中で避妊について彼を攻めたのは言うまでもない。
今シーズンは例年になく調子がよかった。首位を走っているのは、例年どおり、JAXダンディライオンだった。毎年、どのチームも打倒!!JAXダンディライオン!!を掲げるが、勝てない。ジェリーズは今年はあまり補強しておらず、昨年のままだ。だが、妙に仕上がりがよかった。全日本、ナショナルチームへの選出、って言うのもあるが、そこで培った技術のフィードバックが大きかった。精神面でもナショナルチーム独特の"教え”なるものがある。そして専属のコーチが付く。そして何より怪我人がすくないこと、これに尽きる。そして、フォーメーションの仕掛け。いろいろ試した結果、また過去の結果から、そしてサマーキャンプの結果から、最適化を計っていた。次の対戦相手は、フェアリーズ。べたべたのディフェンスと高速バスケ。中からでも外からでも仕掛けてくる相手。そしてホームゲーム。ジェリーズのチームカラー、スカイブルーで会場が染まる。なぜか、ホームゲームに限りPAが投入され、社員が刈り出される。専用にアナウンサーを雇うほどだ。
開会式が行われ、市長の挨拶、バスケット連盟会長の挨拶、地元出身の選手への花束贈呈へと続く。ウォームアップ後、審判の紹介、選手紹介をする。ここはどちらも負けられないため、ベストメンバーのガチンコ勝負だ。PAがあるため、応援はチョー楽だ。
ジャンプスターターは1m88cmの#8、ジュンだ。背は高いが抜群のプロポーションだ。ジャンプするたびに胸が揺れる。審判の笛が鳴り、さあ、ティップ・オフ!!ジュンのワンハンドトスから前衛に送る。リサが抜け出した。高速ドライブだ。
だが、ディフェンスの戻りも早い。軽くボールと体を左右にゆすりながら突き進む。するとハンドリングしながらリサが時計方向に回転した。見た目はスローに見えた。回転しながらボールをバックボードにあて、ゴール!!!
アナウンサーが叫ぶ!!ナイシュー、リサ!!!
高速ドライブとバレリーナショットが決まった。
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本作品は空想小説です。現実にある団体やいかなる個人とも関係ありません。
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