母を助手席に乗せ、買い物へと向かう道中。
車窓から外を見た母がふともらした。
「あの二人は兄弟で、障害のある弟をお兄さんが面倒みてるんや、会社帰りかな。」
年の頃は四十代後半から五十代くらい。
毎日同じ服を着て(兄と弟の服は模様違い)
仲良く並んで歩いてる。
働いて朝早くに家へ帰る途中
あるいは家から職場へと向かう陽が落ちた時間。昼間のときもある。
それから3年くらいが経った。
時々は姿を見かけるものの頻度は減って、
でも最近はよく見かけるようになった。
今はお兄さんは杖を持って歩いてる。
弟は以前は兄の横に添いながらだったのが、
兄の後につき、二人とも下を向いて歩いてる。
何も謝る必要はないのに
それとも癖なのか
弟は申し訳なさそう両手を前に組んで歩く。
いつ見ても同じ。ずっと変わらない。
なぜだかやるせなく思う。
同情ではない、同情だったら失礼過ぎる。
お金を浮かせるために歩いてるのかな。
駅から家まで3キロ以上あるよ。
本当に必要なところへ支援が届いていない。
ライトが当たらない、見えないところには。
誰かの目や耳に入るか入らないかの紙一重が、
生きていく生活や環境へと大きな差を生む。
何ができるのかな。
どうしたら良いのかな。
それとも必要がないのかな。
もう思うだけは嫌なんだ。
声なき声は気付いていないだけできっと
当たり前に私の周りにある。
暑い夏はまだ続く。
少しの秋を迎え厳しい寒さがまたやってくる。
季節は移り変わるのに
二人は変わらないままだ。
ルンルン♪
