もうかなり前の話。
会った事もないアイツが耳元で囁いたんだ。
彼女を助けてあげてって。
しばらくして、ぼくと彼女は知り合った。SNSでね。
彼女は愛する人を失ったばかりだった。
ぼくは面喰らったよ
その彼女がアイツの彼女だったから。
もちろん、ぼくはアイツとは会った事もない
でも不思議なことにアイツの彼女=助けなきゃなんない彼女だってわかってしまった。
ぼくと彼女は自然に仲良くなったんだ。
ぼくは、彼女にアイツのこと一言も言わなかった。
だって、ぼく自身とても半信半疑だったし、嘘みたいだけど会った事もない彼女に恋してしまったからね。
でも彼女には結局、会わなかったんだ。
彼女はアイツを失った悲しみから抜け出せず、ある病気を抱えていて、それも災いして進展しないでいたんだ。
アイツからは助けてあげてって囁かれた手前、ぼくは躍起になってあの手この手で彼女を元気付けようと(今思えば、かなり驕った気持ちだった)した
今思えば、全てぼくの自己満足。
その自己満と進展しない苛立ちで
ぼくはある日、ブチ切れた
彼女に向かってまるで真反対の気持ちを浴びせたさ。
なんとも後味の悪い言葉をね。
もうダメなんだ、と思った
助ける意味が全然わかってなかったんだ
今でもわからないよ。
でも、君の力になりたかった。
これは本当さ
好きっていう気持ちは時として残酷な気持ちにもなる
あの日
伝えたかった
助けてもらったのはぼくの方だ
だから
本当にありがとう
と。