最終的には待つ事2時間20分、11:20にやっと相談室に通された。2人の警官が別々に相談の対応をしていた。

私の担当は恰幅の良い30代くらいの若い男性警官だ。

対面して分かったが、彼はイタリア語しか話さない。

地方だとホテルとか観光客向けお店以外は何処も英語が通じない。

仮に英語が通じても今回の相談は私の語学力では難しいと思うのだが、、、。

事前に簡単に状況説明をイタリア語にGoogle翻訳したスマホを見せるとある程度被害状況を理解してくれた。

 

でも、これからが長かった。

そしてこの警察署は歴史ある建物で分厚い石でできているようでモバイルデータ通信の電波が全く入らないのだ。

相談する時Google翻訳使えないじゃないか!!! おいおい、それじゃ困る。と言っても彼がいきなり日本語をしゃべるわけはない。

彼は両手を挙げて困ったそぶりをするので、私も真似をして両手を挙げて俺の方がもっと困っていると強調した。それで何か解決するわけはないのだが。

それでも、色々コミュニケーションを続ける中で、彼のパソコンには翻訳機能がついている事が分かり、これで安心だと思った。ところが、なんと日本語へは翻訳してくれないのだ。英語は勿論、韓国語や中国語にも翻訳するのに、よりによって日本語への翻訳機能のがないのだ。
盗難にあった場所•時間•状況等分かりやすい質問は何とかクリアーするも色んな質問が飛んでくる。

質疑応答が細かいし超長い。そして意味があるのか疑われるような質問も多い。

日本で何をしてるかと聞かれていると思いわt仕事は辞めて今は何もしていないのでスペイン語で『pensionista』と答えるが期待の回答と違うのか何度も聞いてくる。

英語にも代えてみるが、私は今は『年金生活者』だと答えるしかない気がする。

彼は『ふぅ』と頭に手をやり面倒なヤツに当たったと言う仕草をする。

 

そのうち日本に行くにはどれくらいお金がかかるのかとか柔道はやってないのかとか意味不明の質問が飛んでくる。適当に答えていると隣で別の人に対応していた警官も日本人が珍しいのか会話に入って来る。その彼は柔道をやっているし、ボスは空手をやっていると世間話になってきた。日本通なのか日本語の1(いち)、2(に)、3(さん)と日本語で言ってきて日本に詳しいことを私にアピールしてくる。親日家であることは嬉しいのだが、これではいつになったら被害届が出来上がるのか不安になる。
しかし、2人とも人は良さそうだ。私もだいぶくだけてきた。旅行前に覚えた挨拶程度のイタリア語も使い始めた。

また、途中誰か昔の仲間が部屋に入って来ると私は放置される。彼らは会話を楽しむのが人生だと言わんばかりに長話を続けるのだ。仕事中ですよと言いたいが、兎に角事故報告書が欲しいので我慢だ。訪問者が帰るとやっと書類作りを再開してくれた。

どこでどういうふうにいつ取られたかを再度確認してやっと住所•電話番号•郵便番号等をパソコンに私が自ら打ち込む。

お昼のチャイムがなり遂に12:00を過ぎてしまった。

彼は驚いたことに休み時間も対応してくれたのだ。
書類作りにもかなり時間をかけているが後で中身を見てみたいものだと思った。

最後には作成したイタリア語の書類を見せてくれるのだが、かなり正確に記入されていてビックリした。しっかり仕事してるじゃないか!!!
流石に個人的な話は何も記載されてなかった。
12:20、もう終わりそうなのにまた人が部屋に入ってくる。そして、また世間話を始めるので作業が進まない。
私としては困ったものだが、これも彼らの生活スタイルなのだろう。

もう誰も仲間が来ない事を願うばかりだ。

12:35、2部作成した資料にOKならサインをしろと言うが、私にはイタリア語の文書はよく分からない。

『貴方を信用する』と言ったらニコッとしていたので、大丈夫だろうと思う。
また、隣の警官も含めてこんなローカルな土地でも結構親日家が多いのに驚いた。若い世代はアニメで日本を知ってファンになる人が多いと聞くが、それより上の世代でも体育会系の人には柔道•空手に興味があり実際自分でやっている人がいる事が私には新発見だった。
長い時間だったが、まず今後経験することのないであろう経験をする事ができて何か達成感を覚えた。

それもアメリカじゃなくイタリアの片田舎だったのも幸いした気がする。アメリカじゃこんなに丁寧に応対してくれない。

きっと一生記憶に残るであろう。
友人には長い時間待たせて且つ旅行計画が半日以上も潰れて本当に申し訳ないと思った。

警察署を出るとその足でシラクーザへ向かう路線バス停へ向かった。

 

PS:実はその後の長い旅でも盗難の危機はあと数回発生しているが、実害は発生しなかった。そして、強盗ではなく体を傷つけられたわけでもなかったことに感謝しようと思う。

盗難の被害は理不尽な出来事で特に旅行時に発生すると困ってしまう事象ではあるが、文化・慣習・宗教も違い、事情があり自国から流れてきた仕事もないような人達が暮らすにはある程度こういう事もやむを得ないのかも知れないと思う自分もいた。

 

長文で失礼しました。みなさんの何かの役に立てば幸いです。