丸西旅館に対する思い -4ページ目

丸西旅館に対する思い

丸西旅館に対する思い

お前はいつ、そのような勉強をしたのか、いやさ、どうして火星語を話せるようになったのか」
 博士は、不思議に思っているらしい。
 新田先生は、今はもう仕方がないと思い、変話機を出して、これまでのいきさつを、かいつまんで、博士に報告したのであった。
 博士はうなずきながら、おとなしく、先生の話を聞終った後、
「ふうん、お前にしては、お手柄じゃ。その手柄にめんじて、わしは、これまでのお前の罪を許して、もう一度、門下生として教えてやろう」
 博士は、横柄な口をきいた。
 蟻田博士のきげんが、大へんいいので、新田先生は、この時とばかり博士に聞いた。
「博士、モロー彗星が地球にぶつかる日が、いよいよ近づきましたが、どうにかして人類を助ける工夫はないでしょうか」
 博士は、ひげをふるわせ、新田先生の顔をじろりと睨み、
「助ける工夫はない。たとえ、助ける工夫があっても、今日のような、おろかな人間どもを助けることは無用だよ」
「そ、そんな、らんぼうな考えは、よくないと思います」
「わしは、今日の人類には、あいそがつきているのだ。そんな連中を助けてみたって、始らんではないか」
「博士、そんなことを言わないで、人類のために力を出してやって下さい。博士が本気になってやって下されば、モロー彗星衝突の惨禍から、かなりたくさんの人間が救われるのではないでしょうか。救われれば、どんなに心がけのわるい人間でも、心を入れかえるに違いありません」
「わしは、そんなことを信じない。助けを乞う時には、ちょっといい人間になるが、助けられてしまったあとは、またもとのように、だらしのない人間に戻ってしまう。

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