丸西旅館に対する思い -2ページ目

丸西旅館に対する思い

丸西旅館に対する思い

手にあたったのが「越後獅子」であった。これならにぎやかなこと、まちがいなしだ。
 和洋合奏のにぎやかな曲がはじまった。
 すると、そのききめは、すぐ現れた。墓石のように硬くなっていた火星人群は、たちまち陽気に動きだした。手をふり足をあげ、重そうな頭を動かして、釜の中へ蝗を放りこんだように、ものすごく活発な踊りを始めた。
「おーい、その曲はだめだい」
 上から山木がどなった。
「だってにぎやかでいいじゃないか」
「いや、だめだい。にぎやかすぎて、踊の方がついて行けないよ。かわいそうに、ネッドなんかまじめに踊っているもんだから、足がふらふらしているよ」
「困ったねえ。『證城寺』をやるか」
「うん、それよりは軽快なワルツでもやるんだね。そして火星人が少しおちついたところを見計って、外交交渉を始めるんだね。もういい頃合だと思うよ」
「なるほど、それでは何がいいかな。そうだ、『ドナウ河の漣』を掛けよう」
 高声器から「ドナウ河の漣」の軽快なリズムが響きはじめると、火星人たちは一せいにしずかになった。そして次第にからだを左右にゆすって、波の寄せるような運動をくりかえすのだった。
 山木が下りて来た。そのあとから張とネッドが下りて来た。