それは「声」でなく「音」なんだと、目の前に広がる光景を見ながら、長秋は思い込もうとした。
「最期に…長秋様をお守りすることが出来て良かった。
私とキャサリンは同格。
彼女の選択を止める権限は私にはなかった。
だが、主に『危害』を加えようとしたからこそ、私はキャサリンを『始末』することが出来た…。」
床に横たわるキャサリンに、鉄パイプを突き立て、背中の中心を目掛けて思い切り降り下ろした。
「断末魔」ではなく、ただの「ノイズ」なんだと必死に思い込み、機械としてはあまりに人間臭く、女性と呼ぶにはおこがましいキャサリンの散り際を見届けた長秋だった。
「助かったよ、グレース。」
「いいえ、今でこそ、庭師型ですが、そもそもは警備型のアンドロイドとして当然のことをしたまでです。」
「グレース、君も僕と柿本の所へ行こう。ブリジットも喜ぶよ。」
「いいえ、先ほど仰った通り、私はこれで最期です。一緒には行けません。
私はこの屋敷ととに終焉を迎えます。先の二体を葬れば私もすぐ…。」
「な、何を言ってるんだ?キャサリンの行為に責任を感じてるのか?それは君が負い目を感じることでは…。」
「長秋様、百聞は一見にしかずです。
モニタールームへ…。」
案内されるままに、屋敷内の複数の監視カメラから映し出されるモニタールームに移動する。
その中で二階屋根裏の現在の状況を映したモニターを観るようにグレースに言われると…。
「マーガレットなのか!?」
床に倒れたハウスメイド型アンドロイドのマーガレット。
屋敷に戻った長秋が一番に不審に思ったのが、このマーガレットの不在と、それを説明しないキャサリンだった。
漸くモニター越しにマーガレットを見れたが、その姿に愕然とする長秋。
その傍らでグレースから説明が入る。
「マーガレットはキャサリンの命令で、キャサリンより先にセックスアンドロイドに改造されました。
そしてこの屋敷を訪れた管理会社の男性を『最初の客』として迎えた直後に機能停止しました。
キャサリンはお父上様とお母上様が長秋様の為に遺したこの屋敷を娼館に貶めた!
私はお母上様の命令で長秋様をお守りしなければならなかったのに…!」
「そうだったのか…。グレースは母さんの命令で僕とブリジットを守ってくれてたんだな。」
「マーガレットは下半身と胎内から『カビと錆び』を発生させました。そして私とキャサリンも感染しています。」
続