初授業から10日。
五人の人間の教官はそれぞれに疑惑と仮説を抱いていたが、塾生との触れ合いにそれ以上の悦びを感じていた。
素直で勉強熱心な妖怪の少女達は、人間である自分達との『違い』を自分達以上に受け入れていた。
文化の違い、歴史の違い、身体の構造の本質的な違い、学びの成熟度の違いも全て…。
塾生側にその自覚が芽生えたのは教官達の脆弱な肉体だった。
自分達に大切な事を教え、育んでくださる教官達の身体は妖怪の自分達より遥かに弱く、傷つきやすい肉体だった。
力の加減と感情のコントロールが出来ずに、敬愛する教官を傷つけてしまった時は深い反省と後悔を示し、涙を流しながら自ら塾長に罰を申し出るほどだった。
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(倫恵)「大分、形が出来上がってきたわね。」
(ゆかり)「やっとイレギュラー無しに時間割りが組めるようになりましたね。
図にするとこうかな…。」
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始業開始9:00
1コマ90分
1時限目 政治
2時限目 歴史
昼休み(1時間)
3時限目 選択体育or選択法律
4時限目 一、二号生合同特別授業
(以上、一号生の授業)
土曜日は平日の2時限と同じをして終わり。
1限目 体育
2限目 法律
昼休み
3限目 選択政治or選択歴史
4限目 一、二号生合同特別授業
(以上、二号生の授業)
冴木マツリ…政治と一号生担任
古瀧ゆかり…歴史と一号生副担任
大月教子…体育と二号生担任
綿貫倫恵…法律と二号生副担任
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(マツリ)「ふむ…全体のバランスが良くなったな…。
問題は4限目を週5回日替わりメニュー出来たらいいんだけどな…。」
(ゆかり)「今までは治美先生や塾長が講話してくれたり、すへ子教頭やおクネ寮長が塾生に嫌がられながらも昔ながらの授業をやってくれたけど…。」
(治美先生)「私はいいのよ、皆と違って保健室で退屈だし。」
(倫恵)「もっと一、二号生関係なくレクリエーションとか増やしたいよね~」
(ゆかり)「そのうち塾生がクラブ活動というかサークル活動をしてくれて、自主的に人間社会に興味持ってくれたらいいんだけどな~。」
(教子)「そのことだけど、この前の選択体育が終わった後、一号生の鳥羽かごめさんから『教官、自分に格闘技を教えてください』って言われたわ。」
(マツリ)「多分、樹里亜を守りたいからだろな。
すへ子教頭の話…家宝を投げ出し、塾長を助けたのは樹里亜の祖母だ」
続