「天使達は、妖怪達に人間界に馴染んでもらう目的で学校を作ったわ。
変身術に人間の文化と歴史。
『より人間らしく』、『より迷惑をかけない為に』
でもそれは天界お決まりの『やるだけはやった』というアリバイ工作に過ぎなかったわ。」
「天界が中途半端に介入したことによる…受験戦争…?
妖怪と妖精の世界がか?
まさか天使が作った学校は、数も定員も少ない超難関校なのか?」
淡々と語る真理亜に対し、区議会議員の冴木マツリは侮蔑気味に聞いた。
天界の特有の『官僚主義』や『縦割り行政』は、代議士のマツリも共通するものを感じたのだろう。
勿論、マツリは皮肉を込めた投げやりな気持ちだったが、当の真理亜は…。
「ええ、貴女の言う通りよ、ヴァンパイア好きの冴木さん。中流家庭の妖怪が天立高校に合格するのは至難の技なのよ。
合格したら村を挙げてお祭りになるくらいよ。」
「……。」
「……。」
「いや『天立高校』って、県立高校みたいに言われても…。」
「勿論、天界だって対策を講じたわ。
一部の『聖人』と呼ばれる天使に認められた地上の人間に、学校の運営を委託することにしたの。
これで天立高校よりもコストダウンすることに成功したわ。」
「……。」
「……。」
「あの…まさか、地上の人間が経営する学校って…。」
「ええ、『地立高校』よ♪」
「やっぱりかい!
私立高校みたいに言わないでください!」
「地立高校も問題なの。
『聖人』なんて、あくまで天界が勝手に認めた人間のことで、妖怪や妖精には関係ないわ。
中には欲深い天使が居て、聖人が亡くなった後の魂目当てに学校の経営を認可する始末よ。」
「いや、そんな檀家の取り合いじゃあるまいし…。」
「そんな学長達がまともな運営が出来るわけもなく、受験する妖怪もその親達も『取り敢えず地立くらいは』っていう始末よ。」
「ホントに私立みたいだし…。」
「あの、三好…塾長と、仰いましたわね?
では貴女が経営する塾はその難関の天立に合格する為のノウハウを学ぶ塾なのかしら?」
「狼女の大月さん、現職教師の貴女には期待してるわ。
でもね、私の萌慎艶戯塾は天立とは真逆よ♪」
「真逆?」
「ええ、ウチは即、役立つ知識を学んでから実際に人間界での生活に成功した後に、天界から異民許可証を貰うシステムなの。」
「移民かよ!」
「厳密に言えば塾というより妖精所ね」
(全員で)『養成所!』
続