秋成が一番愛してる人?
東瀬でも、藤田さんでも、早乙女でもないなら…ましてや実の姉に恋心を抱いていないというなら…。
簡単な消去法じゃないか!
僕が抱き続けて疑問。
パズルのラストピースがすんなりハマる瞬間だ…。
でも、秋成はその答えを僕に言わせようとしてる。
凍りついたその瞳は、僕の口から答えが放たれた瞬間に、満面の微笑みに変わるのは目に見えている。
言えない、認めたくない、喜びも哀しみも、怒りさえも、全てが秋成に抗えなくなるのが怖い。
心の中で東瀬を何度も思い描いた。
忘れたくないから。
クラスメートとして、マネージャーとして、本当は優しくて女の子らしい東瀬を何度もイメージしても、頭に浮かぶのは、リトルリーグ時代のエースで四番の彼女だった。
「…すまん、お前との沈黙の時間は嫌いじゃないが、そろそろ帰らないと…。」
「あっ、ごめん!
ええと、寄る所あるんだっけ?」
「あぁ、姉ちゃんの頼みで電気屋にな。」
「じゃあ、また明日…。
ねぇ、僕たちはあんなに練習したんだから、山大付属にも健闘出来るよね?」
「健闘?大丈夫だ。
絶対に勝つ!」
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「美由紀ちゃん、私、応援に行ってもいいのかなぁ?」
「な、何言ってんのよ?ノノさえ大丈夫なら、応援は一人でも多い方が心強いわよ!
私はマネージャーとしてベンチ入りするから、話せないけど…。」
「ううん、美由紀ちゃんはそれが仕事だからいいのよ。
迷惑じゃないなら…。」
「大丈夫よ、ありがとう。
じゃ、明日ね。おやすみ」
ノノは意外と強かった。
自室で大泣きしてるかと心配したが、逆にノノの方から電話が来た。
「誰の迷惑?慎太郎?玉野?私?」
とは聞けなかった…。
私に恨み事を言わないノノが少し怖かった。
「美由紀、長電話もほどほどにね。
みんなのスポーツドリンクをお母さんに作らせて、自分はお友達の恋愛相談はないでしょう?」
「ごめん、ごめん。
でもこれが拗れたままだと、打てる球も打てなくなるしね~。」
「まぁ、のの香ちゃんたら、慎くんに恋したの?
貴方、どうしましょ!」
「ほう、慎太郎の良さがわかる女の子とは見所があるねぇ。
あいつは気配りのある捕手向きの性格だ。あと五センチ背が伸びるか、あと五キロ体重が増えたら、父さんが捕手にコンバートさせて、美由紀と黄金バッテリーを組ませるのになぁ。
そうすれば甲子園も夢じゃない。」
「私は女よ!無理!」続