「ほぅ、我々ヤハウェ教に伝わる『最終戦争に現れるという、リバイアサンとバハムート』に、アスガルド教の神話『トールの槌』が絡むとは、パウエル先生の想像力には感心しますわい。
次の舞台も大盛況になりそうじゃのう。」
「司教様、確かに僕は作家には違いありませんが、一番の仕事は学者です。
あくまで学術的見解として二つの宗教には数々の接点があり、寧ろ『大破壊』の解釈の相違から、一つの歴史的事実が二つの宗教に別れたのでは?と、思うくらいです。
…僕の頭の中のことを、他の誰かに再現出来るわけない。だから僕は作家も役者も自分でします。
女の僕が男の社会で持論を主張するのは大変ですが…。
僕は熱心なアスガルド教徒ではありませんが、ヤハウェ教は、もっと世の中の女性を大切に扱って欲しいと願います。」
「アンナ、言葉を慎め!
殿下の御前であるぞ!」
「ごめん、ジョン…。
殿下、申し訳ございません。」
「構わないよ、本でしか読んだことがない、アルフォンソ=パウエル先生の生の声が聞けて嬉しいよ♪
ただ、グレゴリウス司教は、ヤハウェ教の司教や司祭の中でも、非常に寛容な方であられる、僕と個人的に親交があるのもその人柄さ。
だから枢機卿に推薦されないんだけど…。」
「ほっほ、ゴマスリで教皇の窮屈な椅子に座るくらいなら、説法行脚に汗水流す方がワシに似合っとるわい。」
「んじゃ、グレゴリウス司教。
パウエル教授の大破壊の説をお聞きする前に、司教の説を聞こうじゃないか。
あぁ、カトリック総本山の公式見解じゃあなくていい。
グレゴリウス大司教様の言葉で話してくれ。
その方がいいだろ、カイザー丞相?」
「勿論です、シェルストレーム内務卿。
それがこの会議の目的ですから。」
「では…あくまでワシの考えじゃが…。
『大破壊は最終戦争ではなかった。』
何故なら、最終戦争で生き延びるのは、ヤハウェ教信者のみじゃからのう。
世界にはアスガルド教以外にもあらゆる民間信仰が現存しておる。
これは主が大破壊に敗北したのではなく、最終戦争ではなかったのじゃ。」
「ふ~ん、イエス=キリストも、この荒廃した世界を嘆いているでしょう。。」
「アンナ、言葉を慎め!」
「みだりにその名を呼ぶでない!
大破壊は『ノアの大洪水』であったのであろうというのがワシの見解じゃ。ノアの方舟は神が作りし『あらゆる者』を乗せた。それが現在の『混沌とした』世の中の実状じゃ。」
続