教会内事務室
「…修道院長と警備主任が手を焼くほどの問題児を私が…。」
「ええ、貴方の事は一昨年の文化祭に来賓の付き添いで来た時から目にかけていました。
そしてこの度、テレビを修理なされた時の丁寧な仕事ぶり…。
人柄は働きぶりに現れるものです。
貴方に是非とも彼女の導き手になってほしいのです。」
「なるほど、一昨年のミニスカシスターカフェはその生徒さんの提案でしたか…。
去年は秘密裏に聖歌隊キャバクラを強行とは…。
しまった、司祭様なんかと演劇を見てた…!」
「何がしまったですか!
赤尾さん、司祭を目指すからにはあらゆる誘惑に打ち勝つ心が必要なんですよ!」
「申し訳ございません、つい…。」
「確かに聖職者でもあのブタ…いえ、この教区の司祭様のように欲望に忠実な方もいますが…。
だからあのクソババアいえ、理事長と意気投合するから、私は貴方を…。」
「全部聞こえてます!
どうせなら僕に聞こえない様に言ってください!
でも…司祭様に対する率直な気持ちは修道院長と同じですよ…だからこの教区は…。」
「教区を移すのも一つの選択肢だと思いますが、まずは貴方だけの力を試してみては?」
「そうですね…不合格の理由を司祭様のせいにしても仕方ない…僕は自分の力で…。」
(小声で)「すみません、修道院長様、あの事を赤尾さんに…。」
(小声)「三好さんが素手でアンテナを壊すなんて誰が信じると?彼女は他にも沢山問題を起こしてますからこれで十分です。」
「そうですね…怖じ気付かれても困りますし…。
それにしても遅いですね…。」
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隣の資材室
「そんなにムキにならないの。
女の子としてそれは自然な感情よ、佳澄ちゃん♪
話してよ」
「ま、まだ恋…と呼べるかわからないんです!
ただの憧れか…テレビ画面の彼と現実の彼が違うことくらいわかってます!」
「落ち着いて、取りあえず座りましょうか。掛けなさい。
で、佳澄ちゃんは何をそんなに怖がってるの?」
「す、すみません。
失礼します。
わ、私が怖がってる様に見えますか?」
「ええ、見えるわ。
今の貴女は、夜道でお母さんとはぐれた子供みたいね!」
「私は臆病者ではない!
言葉を慎め!」
「うん、棒キレを振り回す子供と同じね。
『弥生と氏家くんの仲を割きたい』って言えば?」
「黙れ!」
山際佳澄が自分のことで誰かを反射的に平手打ちするなど初めてだった。
続