とある昼下がり
「後藤さん、お昼休みはまだかしら?
アフタヌーンティーを楽しみながらお耳に入れたいことがございますの」
「修道院長様が守衛室まで来てくださるとは珍しい。
わかりました。すぐに他の者と交代します。」
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教会内事務室にて
「…バーバラフェスティバルの準備も順調なようね。」
「ええ、また賑やかな季節がやって来ました。
私に取っては入学式や卒業式と同じ位忙しいですからね。」
「聖バーバラの純白ワンピースを一目見ようと、招待状を持たぬ不埒者が毎年出没しますからね。
後藤さんはそんな連中をしょっぴくのが楽しみではなくて?」
「昔は使命感に燃えてましたが、孝(たかし)さん…、いえ、播磨屋さんとお付き合いさせて頂くようになってからは、あまりヤンチャな事は自重しようかと…。」
「あらあら、元自衛官様もすっかり恋する乙女のようですね?
外部の守りも大切ですが、内部の取締りも大切ですわよ。」
「内部?ま、また三好真理亜が何かやりましたか?」
「直ぐに本題を見抜いてくれて有り難いですわ。
今日、一人の生徒が悩みを打ち明けに来られましたわ。
『恵明寮のアンテナを壊したのは三好真理亜だそうですが、理事長に知らせるか迷っています。
どうにも決心がつかず、まずは修道院長様に告解したくて…。』と、随分生真面目な生徒さんでしたわ。」
「や、やはりあれは三好さんの仕業…。」
「おそらく『電気屋の赤尾さん』との再会を画策してのイタズラでしょう。」
「たかだか修理に来てほしいからとそんな…。」
「三好さんはそういう生徒です。
後藤さんも散々手を焼いてるからわかるでしょう?」
「はい、それはもう…。
しかし、それで修道院長様は何と?
やはり理事長に知らせるのですか?」
「馬鹿をおっしゃい!
山際さんには…あぁ失礼、生徒の名前は忘れてね。」
「もう遅いです!
剣崎さんのお付きですね。納得です。」
「で、その子にはこの件は私が預かると言って帰らせました。そして誰にも言うなと言っておきましたわ。
あのババア、いえ、失礼。理事長の耳に入れたら、またヒステリックなお仕置きを三好さんにするだけですわ。」
「それで?」
「三好さんが赤尾さんにそんなに会いたいなら会わせてあげましょう。」
「大丈夫でしょうか?」
「ええ、文化祭の事前打ち合わせとの名目で『助祭の赤尾さん』に来て貰い、彼女のお説教を頼みます」