瀬戸際の花嫁 9 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「医師は目の前の患者の為にベストを尽くす。
私はそうしただけだ。」

淡々と無感情に話す権藤医師。
人間の医師より遥かに冷淡で、過去に私を助けてくれた、佐田君のお姉さんの真樹さんとは大違いと思った。
また、子供の時に読んだ絵本に描かれていた「天使」とは全く別物だと思った。

この人でなしの医師は、一方的におみねちゃんを悪霊扱いして、勝手に私に点滴を打って、おみねちゃんの妖気を受け付けない身体にしようとしている。

「私の為」と言ったらそうかもしれないけど、他の可能性があるかもしれないのに、命の為に無断で四肢の切断手術をされた気分だ。

「貴方達天界の住人にしたら、二度に渡り成仏を拒否したおみねさんの気持ちは理解し難く、ただ異質な存在でしょう。
だが、瞳に取っては僕と同じくらいかけがえのない存在なんです!
勝手に有害な悪霊と決めつけるのはいつも天界の都合じゃないですか!
人間なのにソロモンの悪魔に名を連ねた僕の時と同じだ!」

宗時さんは天界のみならず、人間からも悪魔からも「同じ」扱いをされなかった。
だから最初は幽霊のおみねちゃんの成仏を自力でしようとした。
今は意気投合した私と「第三の人生?」をエンジョイしてると思ってたけど…。
だから私はもっと深くわかりたい。
宗時さんとおみねちゃんの気持ちを…。

「他に方法があればやってましたよ。
強い薬は強い肉体があってこそ効果を発揮する。
北御門さんは天使の治癒魔法や解毒術を受けるにはあまりに脆弱な肉体だ。」

事実だけを述べる権藤医師。
遂にナースの里見愛さんが見兼ねて権藤医師に自分が説得するからと退室を促した。

「過去に私はその虎徹で斬られたバティンさんに治癒魔法をかけて、邪な思念の除去に成功したです。
それは屈強な悪魔の肉体があってこそです。
そして…権藤医局長を悪く思わないでほしいです。
医師は目の前の『生』に全力を尽くすです。そして『生』は『死』と常に直線的対極とは限らないです。100年以上も人間界を彷徨った浮遊霊ならわかるはずです。
あの世で意中の近藤勇にフラれた失意で善良な人間に迷惑かけるなです。
妹のウリエルと弟サタンによって一度は天に導かれた尽力を忘れてほしくないです。
あぁ…これは姉としての私的感情です。失礼したです。」

里見愛さんの言葉はさっきの医師より真っ直ぐ心に響いた。

そしておみねちゃんは…。

「わかった。瞳、私今度こそ成仏する」続