「迎えに来て」とメールした瞬間に嵐が背後から現れた!
嘘みたいなドラマチックな展開に今にも心臓が止まりそうで…。
「な、何で?到着するにも早すぎるでしょ!
何処で見張ってたのよ!このストーカー!近くに居るならメールしないで電話すればいいでしょバカー!」
まただ。私は嬉し過ぎてまた気持ちと反対のことを…。
嵐は昔から私の王子様なの?
ううん、今は舞花の王子様か…。
「帰るで、るん。
流山から叔父さんに『今帰りました。つくばエクスプレスが楽しみだそうです。』って連絡入っただけや。」
そっか、翠伯母さんが自分の弟に連絡するのは全然普通だよね…。
「あ、ありがとうね、嵐…。
私、この旅行で…。」
「何や?」
構内を二人で歩く道がもっと長かったら、と思った。
タクシーに乗り込むまでに伝えなきゃ。
東京駅はだだっ広いけど目的地が決まってて向かうと意外とコンパクトだ。
どんな状況でも私に味方しない東京駅はやっぱり嫌いだ。
「あのね、私、この旅行で…。」
言わなきゃ。
舞花や昔の私の事は聞かなくても、研究のヒントは嵐に取って大切なんだから…。
「これ…。
農業のお手伝いしたお礼に頂いた落花生。
私が頑張ったから貰えたんだよ。」
「そりゃお手柄やな。
楽しみにみんなで食べようや。
どうや、少しは俺みたいな田舎モンの気持ちがわかったか?」
「うん、まだよくわかんないけど、よくわかんないことは沢山だなってのはわかった…。」
「おう、るんらしいええ答えやないか。」
「その田舎でおばあちゃんが言ってたよ。
『どうせこの世は男と女しか居ない』って。
ねぇ、これって鶏子ちゃんの研究にも活かせるじゃない?
論文が完璧でも足りない何かって…?」
「ま、まさか今更有精卵か?
アホか、卵子の構成だけでもデリケートやのに、精子の蛋白質組成まで計算したら天文学的パターンが…。いや、そもそもダイヤモンドは炭素の結晶で有機物の代表。
エサや気温や雌鳥のDNAの配列ばかり考えとったけど、雄鳥にその決定権があるなら…。」
※作者注 相野嵐の声はコナン君の服部役の堀川亮さんのイメージで。
「ちょ、ちょっと、落ち着いて!もしかするとで言ってみただし、専門用語わかんないんだから!
明日、明後日に答え出さなきゃなんないわけじゃないんだし、明日から私も手伝うし!」
「手伝い?」
「うん、早起きして鶏子ちゃんにエサあげる。ミミズとか」