無事にお葬式も終わった夜。
今夜は嵐さんのお家に泊まって朝一で彼を我が家に連れて帰る予定だけど…。
お母さんは、大好きだった自分のお兄さんにそっくりな嵐さんを見て…。
「嵐くん、叔母様なんて水くさい。
これからは私を本当のお母さんと思って♪
何ならかつてのお兄様の様に『桜子!』って冷たく呼び捨てにして…。
あぁ、その瞳、お兄様に生き写し…。
さぁ、早く寝ましょう…。」
あ~、お母さんが壊れたー!
いつもいつも8年前に亡くなった春人伯父さんの事になると別人になるんだから!
それに嵐さんも何よ!
さっきまでは私と同級生と思えないくらい大人っぽい雰囲気だったのに、お母さんの大っきな胸に顔をうずめて…。
少しは嫌がりなさいよね!
何で男ってそんなに大きいのが好きなの?
どうせ私だけ遺伝しませんでした!
って私って何イライラしてんの?
「…叔母様…。
申し訳ございません。
僕を可愛い甥っ子と思うなら、どうか温かく見守ってください。
それに…。」
「それに?」
「叔母様には、父さんに似てない僕も見てほしいじゃないですか?」
笑った!ぶっきらぼうで冷たい視線の嵐さんが始めて見せた笑顔は、42歳の敏腕女性CEOを赤面させるのに十分だった。
「そ、そうね…。嵐くんは嵐くんで春人兄さんとは別人だわ…。
そ、そんなのわかって…ます…。
るん!何してるの?早く寝るわよ!明日早いんだから。
じゃ、じゃあ嵐くんおやすみなさい。
引っ越し荷物は心配しないで。
ウチの社の者を手配してるから。」
「ええ、必要な手荷物だけはまとめてます。
おやすみなさい、叔母様、るんさん。」
な、何か紳士的で大人の対応にイライラする!
さっきまでは嵐さんの大人っぽさに不覚にもドキッとしたけど…。
お母さんへのあの対応…。あいつ自分のモテを自覚してんの?
だったらムカつくんですけど!
あ~、男は信用ならないわ!
だからこの田舎に『けい子さん』って彼女さんを置き去りにしても平気でいられるんだわ!
都会の彼女が出来たら切り捨てるんだわ!そうに違いない!
嵐と『けい子』さんとの遠距離恋愛は私が死守しなきゃ…。
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なんか…あいつの事で頭がいっぱいのまま寝ちゃったけど…。
「嵐さんが仲良く助手席に座って。私は後ろでお邪魔しませんから!」
「あいよ、んじゃ、これ後ろに積んでくれ。」
「鳥かご?ニワトリ?」
「ああ、雌鳥の鶏子(けいこ)だ」