自室アパートのベランダに佇み、一人夜空を見上げながら島敦子は呟いた。
「洞察力、や自己犠牲の精神。そして単純な肉体の強さは申し分ないわ。
でもね…きらびやかな世界で生きるって、それだけじゃないのよね…。」
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南部彩の掌打をくらい、壁に激突する大島編集。
昏睡させた上で暴行に及ぼうとした事を考えれば、生ぬるい仕返しだろうか?
一撃で気絶させなかったのは、親友の島がお世話になった人という遠慮があったのかもしれない。
または、高校時代の恩師である、三好真理亜の様に相手に反省を促したかったかもしれない。
「出て行ってください!
貴方の様な人に、自分と島さんの仲を語られる事さえ腹立たしい!!
島さん、いえ、志磨子先生の作品は自分の推薦文等無くとも磐石の傑作であります!
サッカー選手である自分の知名度など、最初から必要なかったのです!」
(申し分ごさいません、島さん。自分は心の何処かで貴女の実力を疑ってしまいました。
そして蒼磨様、もう少しで自分は取り返しのつかない背徳を…。
どうかお許しを…。折檻は覚悟の上です!)
「はぁ、はぁ。リークされた情報の『ドM』だけ聞いて、忍者なんてネタだと思ってた俺のミスだな…。
だが、忍者が本当なら、こっちの情報も…。」
大島編集は足下をふらつかせながらも、ワインが入ってた冷蔵庫の隣においてあるボックスを手にした。
それは釣り用のクーラーボックスで二つの錠を外し、中に手を入れると…。
「駄目で元々だ!まだ勝ったと思うなよ!」
「無駄だ!仮にその中に拳銃が入っていても、実戦経験の無い素人の貴方には自分に致命傷を…。」
「…ゲコ♪」
クーラーボックスに武器を隠すのも変な話だが、そこから出てきたモノは、拳銃以上に南部彩を恐怖に陥れるものだった。
「カ、カエル~!
ひぃ…イヤァ~!」
屈強な戦士である南部彩に女性らしい悲鳴を挙げさせたのはカエルだった。
大きな大きなカエルが計4匹、南部彩に向かって跳び跳ねる!
「く、来るな!ヒィ…。」
「形成逆転だな!くの一さんよ。俺の担当に爬虫類好きのエロ漫画の大御所様が居るが、計画失敗の『保険』に用意しといて良かったぜ!
君にはキスを拒否られた仕返しに、このカエルくんとなら…。」
「いやぁ、近づけないでください…。」
「こうもあっさり行くとはな。さて、読者プレゼントの手錠を君には自分ではめてもらおうか?志磨子先生のサイン入りさ」