「こら~、さっきから上の空だぞ!
流れ作業的な営みは反対ですぅ!」
「あ、あぁ…。すまない…。」
「もう!ホントに謝らないでよ。
こういう時には喰いちぎるか、身籠るかが効果的だけど、カズにはこっちの方が効くのかな…?」
和夫と明美との付き合いは続いていた。
悪質なホストに絡まれる明美を助けたことから始まった二人の縁。
明美の父の力でホストとして働き出しても、和夫が自分の力でNo.1になっても、和夫と明美の関係は続いていた。
しかし、明美が連れてきた後輩キャバ嬢の「瑠璃子」との出会いが二人の関係の溝となりだした。
「いい加減…私とキスしてよ…。
私、カズが瑠璃ちゃんに惹かれても、私に飽きても、カズが好きだよ…。
でも、カズが高校時代の『お姫様』に苦しんでるのだけは耐えられない!
私のカズを苦しめる女は探し出して殺してやりたい!」
「…お、おい明美…?」
「瑠璃ちゃんは私より可愛いもんね…。
あの娘とならキス出来そう?」
「わからない。いや『出来るかもしれない』としか俺は言えない。
あの娘には俺なんか必要ない。
困ってるなら助けたいが、俺があの瑠璃子さんを困らせたくはない!」
「…そう…じゃあ、私の苦しみはどうなるの…?」
「明美…?」
「私ね、カズの事が本当に好きだよ。
いつも命がけで私の為に一生懸命になってくれるカズを誰よりも愛してるわ!
でも、カズが本当に愛してるのは私なんかじゃなくて思い出の中の『お姫様』!だからキスしてくれないんでしょ!」
「…返す言葉もねぇよ…。その通りさ…。
こんな俺じゃ駄目だ。
親父さんには俺が頭を下げ…。」
「やめてよ!父ちゃんは別に組の後継ぎとか関係なく『漢』としてカズを認めたんだから!
それに…私を『鳥かご』から出してくれた事には感謝してるの。ほら、これ!」
ベットから起き上がり、カバンから取り出した書類を和夫に見せる。
「入学案内?」
「私、自分の力で生きてみようと思うの。美容師専門学校と看護学校どっちにするか迷ってるけどね…。」
「看護学校にしなよ…。
撃たれた時は連絡するぜ…。」
「撃たれた時だけ?
…なんて冗談よ!
じゃあ、ホントに…。」
「あぁ、すまない…明美。お前とはここまでだ…。」
「私もこれがベストだと思う。
カズが思い出に苦しむより、目の前の瑠璃ちゃんと幸せになってほしいもん。
あっ、入学金と授業料は振り込んでよね!」続