「ええ?牧野さん独立リーグで投げるんですか?」
「あぁ、所属先の社会人チームからはコーチ就任を打診されたんだがな。
家族と話し合って、メジャー挑戦するなら今しかないってな…。」
「甲子園準優勝投手でも直ぐに活躍出来ないって、プロって厳しいね~。独立リーグで活躍しても、メジャーから誘い来るとは限らないんでしょう?」
「まぁな。いつの間にかスタジアムでホットドッグ焼いてるかもな。」
「独立リーグは準備から運営まで全部選手達でやるもんな…。」
「だからって、俺みたいに日本球界に残ってもいいことばかりじゃないぜ?」
「千石さんはライオンズのブルペン捕手ですもんね。
ドラフト指名された時は、北条町もお祭り騒ぎだったのに…。」
「俺は投手を育てる方が向いてるみたいだ。選手としては結果が出なかったが…。
GMから認められたら二軍バッテリーコーチの話もあるらしいけど。
コーチ業は氏家の方が先輩だぜ?」
「学校側からしたら、俺らの世代は『不作』だったからな。あれから徳川実業は徹底した『管理野球』にシフトして、コーチ陣もプロ並みに大所帯さ。
あれだけ学校に貢献した生え抜きの俺もただの外野守備コーチ、中間管理職さ…。」
「弥生と上手く行ってれば迷うこともなかったのにね?」
「か、加納さんとは別世界の…。
でも、徳川実業の海外遠征に、カナダやアメリカだけじゃなく、野球途上国を必ず招待するように言ってくれたのは、加納弥生『代表理事』様のおかげさ…。」
「弥生はホントに奉仕と信仰に生きる事を選んだものね…。勿論、実家の後ろ楯があってこそだけど…。」
「でも一番信仰に厚いのは五月よ!
いくらご主人さんの仕事とはいえ、途上国で布教活動してるなんてね…。
学生時代に散々モテて遊び尽くしたのは漣と同じなのにね?」
「…私は最初から柚子葉一筋で…痛い!痛い!」
「蘭ちゃん、パパみたいな彼氏はママ反対よ~。
モテて遊んだのはまり姐も一緒じゃないの?」
「あら、私は純潔を愛する徹に捧げましたけど?(棒読み)」
「で、その榎田くんといつ一緒になるの?
年下彼氏がスペインにずっと一人じゃ可哀想よ!」
「可愛い北条学園の現役生徒会長が教育学部に合格したらね♪私の後継者が出来たと思って安心して日本を発てるわ…。
だから…先に結婚を済ませることにしたの…。
今日は秋彦の墓前とみんなにそれを報告したくて。」
『おめでとう!』(完)