「全く、この星は人間以外には住みにくいことこの上ないです。
まぁ、だからこそ『あのお方』は無意味とも言える『干渉』を…。
一番大人しそうな京子さんですら、時に乱暴です。
テッペキ!戦士に共通するのは、五人が五人ともひとつの事に集中すると周りが見えなくなることです。
マリアが大事な時期に入った今、私がしっかりしないと…。」
この姿で飛ぶよりは、人間になって歩いた方が早いと思い、変身しようとした時…。
「待って、行かないで…。
ねぇ、君…。
もっと君の姿をよく見せてよ…。」
「わ、私が視えるですか?」
「視えるも何も君はそこに居るじゃないか?
天使…?にしては小さいよね?妖精さんかな?」
「何を以て小さいと妖精、大きいと天使と決めるですか?
娯楽が蔓延した文化は真実を闇に…。」
「ねぇ、俺の絵のモデルになってよ…。
妖精に出会えるなんて一生に一度のことだよ!
みんな徒競走を見てるから、教室は空いてるさ。」
(徒競走…。
あの女性、島敦子さんの動向に探りを入れたかったのに間に合わないです。)
「そんなに嫌かい?」
「私達の素性を公開されるのは困るです。」
「描き終わっても誰も信じないさ!
画家の西九条純のお遊びと思うだけさ。」
「純…?あぁ、クレープ屋さんで不良に為す術もなく、相良さんに丸投げした人ですね。」
「…妖精さんの口は悪魔だな。
そして閻魔さま並みにお見通しだ。」
「日本国の宗教観はこの星でも末期症状と思うです。」
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「まさか妖精さんとイデオロギー論争しながら絵を描くとは思わなかったよ。」
「貴方は見たもの、聞いたものだけを信じ過ぎです。
経験主義がもたらす合理性は、思索することの可能性を否定するです。」
「思索の可能性…?」
「現実に無いものを創造する所に芸術の深さがあると思うです。
人間以上の高次元の存在から見れば、それは非生産的で、非論理的なガラクタかもしれないです。
しかし、人類の魅力はそこにあると思うです。」
「なるほど…写実的な絵ばかり評価された俺には辛辣な言葉だな。
…やめだ!」
「何をするですか!
何も破り捨てなくても…。
行き過ぎた言葉は謝るです。」
「描きたいものを描くだけさ…。
評価なんか気にせずにな」
完成された絵には人間化し、学園の制服を着た私が描かれていました。
後に学園に寄付されたこの絵のタイトルは
「女子生徒・天使の+1」