「リビドー軍曹、インモラル大魔王様は深い瞑想に入られた。
話は私が聞こう。」
「ナイトメア将軍、瞑想とは?」
「あぁ、きっと奥方様を偲ばれているのだろう。
同時代での転生に成功されてるなら、きっと互いに引き付け合うはずだが…。
こればかりは我らとて『法則』に逆らえん。」
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「ご主人様、料理長と庭師の密談を聞いてしまいました。
やはり、噂は本当でした。
早く、お逃げ下さいませ。」
「…君は何故、そのことを私に教える?」
「何故って…『吸血鬼』だからといって、ご主人様が『退治』される理由はありません!」
「では、何故、君は私が人間でないと知りながら仕え続けた?」
「そ、それも理由はありません…。
ただ…私を襲おうと思えばいつでも出来たのに…と思うと…。」
「人間と同じ食事をしている『フリ』に協力してくれた君には感謝している。
君が私の自室に食事を運び、それを貧しい者に君は分け与え続けた。
しかし、それももう限界だ。
あらゆるものに終わりはある。」
「ご主人様のおかげで、屋敷のネズミさんはすっかり居なくなりましたわ。
それに野盗も…。
なのに、ご主人様が人間でないからと言って使用人達が屋敷に火を放つ計画を立ててるなんて!
私、やっぱり恩知らずな行為を許せません!
私が刺し違えてでも料理長と庭師の凶行を止めれば…。」
「いいんだ。その気持ちだけで。
私は人間に『退治』される。
焼かれた肉体を10日以内に水辺に四散されない限り、私は復活する。」
「どうして、どうしてもっと早く逃げなかったのですか?
屋敷だけではなく、もう村人全員がご主人様を疑っております。」
「君との楽しい時間が私に迷いを…。
逃げるのは君の方だ。
私の最後の姿を見せたくない。」
「復活っていつですか?
一ヶ月ですか?二ヶ月ですか?必ず会えますよね?」
「メグミ、私は必ずお前を探し出す。何年かかってでも!」
あれが私がついた最初で最後の嘘。転生にはもっと時間がかかる。
無知な使用人達は翌日、私を串刺しにしただけで、肉体を燃やさなかった。死に切れなかった私が見た物は『私の仲間』の疑いをかけられ、惨殺された彼女の姿だった。
それから随分死ぬのに苦労したが、「革命」が後押し、吸血鬼も貴族も『同様に』処刑された。
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「将軍、軍曹は私に何と?」
「はっ、有望な女性戦闘員が居ると…。」
「女?名は?」
「恵です」