校外 男子部員の練習
「暑い~!グランドと校外のアスファルトとの差がこんなにあるなんてー!」
「情けない声出すなよ芹沢!
お前はまだいいよ。
俺なんか長袖のキーパーユニフォームだぜ!
ちくしょう、真田先輩みたいに体操服に着替え直したら良かったぜ!」
「柿崎先輩、とっとと不審者を取っ捕まえて、こんな練習切り上げましょうぜ。」
「赤松、勘違いするなよ。
俺達は警戒と見張りが仕事で、捕まえるのは片倉先輩や榎田先輩の役目だぞ!」
「は~い、わかってま~す。」
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「ウチの生徒に何か用かな?
話は僕が聞くよ。」
「元・室町中の片倉さん!
いえ、すみません!
何でも無いです。
失礼します。」
やれやれ。
不審者の警戒と言われても、通学路は子供達のカツアゲにナンパ。
大人達による塾と宗教の勧誘。
本題以外の仕事がこんなに忙しいとは…。
この調子じゃ、榎田くんも南部さんも大忙しそうだね…。
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「南部先輩お疲れさまです。
お先に失礼しますね。」
学校から一番近い区域を受け持つ私に挨拶する下級生。
面識はないはずなのに、名前を呼ばれた。
「な、何故自分の名前を?」
「キャー!ホントに一人称が『自分』なんですね(笑)。
予選や練習で大活躍してる南部先輩て、けっこう人気なんですよ!
高坂先輩には彼氏さんが居るって噂ですし。
あっ、竹刀構えた姿で写真を一枚いいですか?」
「あー、未紗だけズルい!私も~。」
「き、君達には緊張感はないのか?
今、学園は大変な時だからこそ、こうして…。」
「ホントにそこいらの男子より漢らしくて好きです!」
「蘭!抜けがけは禁止よ!」
「い、いけません。
自分は警戒の任務中で…。
蒼磨様…助けて下さい…。」
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「それでは、今日の練習はここまで!
三好先生の指示通り、なるべく一人で下校しないように。」
女子部員だけの練習は高坂先輩の号令で終りが告げられ、伊達まどかちゃんの印象だけが強烈に残る一日となった。
「男子は戻って来なかったねー?」
「うん、私達が帰るまで警戒しながら練習してるみたいだね。」
「でも、それって私達は男子の先輩と一緒に下校出来ないってことよね?
伊達ちゃん…じゃなかった、さやかちゃん?」
「な、なんで私に聞くんですか?」
「さぁ、何でかな?さやかったら、ほぼ毎晩、自分の部屋で…。」
「まどか、それは秘密の約束…!」