高坂瑞穂の自宅
「何?私は全然聞いてないぞ?
ええい、お兄様は何でいつも突然に…。
三好先生は前から知っていただと?」
翌日。練習後
「春休みに海外合宿!?」
男女の部員が一斉に歓声を上げる。
お兄様から昨夜に知らされていた私は少し落ち着いていた。
「ええ、漣が…いえ、高坂さんのお兄さんがドイツに是非ともみなさんを招待したいって。」
突然のサプライズにみんな大喜びだが急過ぎてみんな戸惑っている。
無理もない。
みんなそれぞれに予定もあっただろう…。
同じ兄妹でもお兄様は私と違って強引なのだから…。
それに三好先生も…。
「真田、ありがとう!
全てはお前と瑞穂ちゃんの出会いのおかげで俺達にはいつも奇跡的な展開が…。
恵達女子とドイツ旅行だなんて俺死んでもいいー!」
武田が代表して喜びの気持ちを表現したが、私にとっての奇跡は武田が中島と付き合っていることと、お前が男子の主将だということだ。
「凄~い優矢くん!ドイツだって~。
お城とか一緒に観光しよ~よ?」
「あぁ、でも日程が合えばブンデスリーガを観たいなぁ。」
柳生と相良の仲には納得なのだがな…。全く、お前達はいつもいいかんじだよ。
「はい、静かに!
日が迫ってるからみんな直ぐに準備にかかってね。
でもこれは観光旅行じゃなくて、れっきとした学業の一環よ!
現地でのサッカー交流と所定の時間内の文化交流をする決まりで校長の許可が下りたのよ。」
「サッカー交流って、高坂さんのお兄さんが勤めてる大学の人達とですか?」
「多分そうなると思うわ。」
「スゲー、ドイツの大学生と試合出来るんだー!」
ふん、ドイツの大学生と言ってもブンデスリーガに誘われなかった連中と試合をしても練習になるものか…。
ここは要・改善だな…。
「文化交流って、何をするんですか?」
「ええ、向こうの大学で一定時間の講義を受けてもらうわ。
大丈夫、その日は日本語に堪能な男女の講師がつくから。」
「何だよ、ドイツまで行って勉強かよー?」
「ドイツ語の授業じゃないだけいいじゃない。」
ふむ、講義くらいは仕方ないか…。
「三好先生、俺にはひとつ心配が…。」
「大丈夫よ、真田くん。
勿論、内藤さんにもマネージャーとして同行許可を校長にもらってるから。」
「ありがとうございます。
この状況で連れてかないって京子に言ったら…。」
「ええ、ハイジャックしかねないわね」