「南部先輩って、無駄な脂肪ないですよね。」
私の一言が思わぬ引金になりました。
「あら、でも彩のお尻って、柔らかくてとっても形がいいのですよ。」
男子も居る前で最上先輩が突然の大胆発言をする。
「さすが由紀姉、部員のことなんでも知ってるねぇ、あっ本当だ、すご~い筋肉でキュッてなってるのに柔らかいお尻♪」
「やあぁ、な、中島主将…。そんな堂々と触らないで下さい。」
怪我で右足を軽く固定されてる南部先輩は一瞬反応が遅れて逃げ遅れました。
「あっ、いいなぁ、私も~。本当だ、あの強烈なヘディングはこのお尻からのジャンプ力なのね。」
「私も触りたいですぅ~。」
「島さんに山名さんまで止めて下さい。
蒼磨様や男子部員も居る前で…。」
「大丈夫です。
僕が許します。」
「ヒドイです!蒼磨様~。」
「あらあら、大変ですわね。瑞穂、『貧乳同盟』として彩を救出しなさい!」
「誰が貧乳同盟だ!
最上、元々お前がけしかけただろ?」
「はい、そうですわ(笑)。
あらあら、同じ貧乳でも彼氏持ちと美尻で彩とは随分の格差ですわね。」
「私は男なんぞ要らん!
それに私だってそれなりに…。」
「ええ、確かに幼児体型の瑞穂も少しずつ成長してますわ。
宇都宮さん、里見さん、今から瑞穂の身体検査よ♪私が許可しますわ。」
そこにはまだ多少傷を引きずる里見さんと、高坂先輩に対して訳ありの宇都宮さんが居ました。
「こら、止めろ!里見、宇都宮。私の命令が聞けんのか?」
「高坂先輩、日頃の恨みです(笑)。
わ~、本当だ。
ペタンコかと思ったら少し膨らんでますね。」
「こら、南部は胸まで揉まれてないのに…。」
『高坂先輩大好きです。』
大興奮する男子部員を前に、悪ふざけの流れで言ったかの様な真樹ちゃんの一言。
それに気付いたのは私だけかもしれない。
愛ちゃんの頑張りに勇気をもらった真樹ちゃんは、さりげなく心意を伝えない告白で片想いに決着をつけようとしたのだと。
彼女が居る真田先輩に対して『好き』と言わずに気持ちを伝えた愛ちゃん。
女性同士の恋心に終止符を打つ為に気持ちを伝えずに『好き』と言った真樹ちゃん。
二人とも逞しいです。
「在校生代表・送辞」
それから二週間後、一橋先輩達三年生の卒業式が行われ、凛々しく送辞を読み上げる真田先輩。
構わずに号泣する南部先輩の姿にテッペキの決意を感じました。(終)