テスト一週間前。
この時ほど彼の人柄を恨むことはない。
「困ってる人」
が大好きなまー君は喜んで皆の臨時教師になる。
それは男も女も関係ない。
学年一の明晰さだけを求めるならまだしも、まー君の優しさを求める女は私がゆるさないわ!
本当なら近寄る女は全員門前払いにしてやりたいけど、私は寛大だから会話がレッドゾーンに入った時点でディフェンスに入る。
「うわ~、さすが凄いわかりやすい~。ありがとう、真田くん。ねえ、良かったら今度私達と…。」
出番ね!
「私達となぁに?続きは私が聞きますけど何か?」
「あっ、内藤さん…ううん、何でもないです。真田くんありがと、またね。」
全く、朝からずっとこんな調子。
去年が懐かしいなぁ。
生徒会長に立候補する為にはもっと成績を上げないとって、私に勉強を教えてほしいって願い出たまー君。
必死に努力して、あっという間に私をも抜き去り、学年一番になったまー君。頑張ってる姿、素敵だったなあ。
あぁ、あの時は二人きりで私がまー君を教えて…、その後まー君にあんなことことを教えられて…。
「ジュル…。」
おっと、一人で回想に耽ってたら涎が…。
あん、まー君を見失うじゃない!
「ちょっと、まー君どこ行くの?部活はないはずでしょ?」
「…ああ、武田と榎田に勉強を教えてくれって頼まれて…。」
応えるのに一瞬間があったのを私は見逃さない。
「うそね、武田君や榎田君がこんな前から勉強するはずないでしょう。いつも前日に泣きついてくるんだから。
…瑞穂…ね…!」
「いや、高坂もいるんだが、武田と榎田だって勉強したがってて…。」
「見え透いたウソは止めて。怒らないから本当のこと言って。瑞穂と部室で二人きりで、保健体育の実技を勉強する、ってはっきり言いなさいよ!」
どうせ成績優秀な私はまー君と一緒に勉強出来ないんだから!そんな鬱憤を自分でも淫らと思う妄想を口にしてしまった。
「わかったよ、じゃあ京子も来い。」
強引に連れられて行った部室には武田君と榎田君、瑞穂に他に二人の女子部員が居た。
「なるほど、武田君達は女子達と勉強したかったってわけね!全く!」
「やったー京子ちゃんも来てくれたなら俺の成績急上昇だよ~!」
「あっ、内藤さんごめんなさい、主将の面倒は私が見るから安心して」
と言ったのは確か中島さん。
それに確か山名さんと、何故か一年の小菅くんも居た。
男女4vs4。凄くイヤな予感がする。続