lrl5l6llgrleのブログ

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「でも、パラシューターに足なんか要らないでしょう――、僕は、もと曲芸師だったんです、どんな六ヶ敷い曲芸でもやっていたんです――飛行機から飛下りる位なんでもありません……お願いします。是非お願いします、このパラシューター以外に、僕は生きて行かれないんです……」
 黒吉は、又そこでも受付の時と同じように口の唾
つばき
が枯れてしまうのではないか、と国際恋愛思われるほど哀願しなければならなかった。
 この醜悪無残な不具者が、眼に一杯泪をためて哀願する様は、哀切というよりも、むしろ凄惨であった。
「お頼みします。例え死んだって僕のせいです。出来るか出来ないか、試すだけでも……是非……」
 頑として承諾しなかった所長も、遂には根負けして、
「仕様がないね、君。――じゃまア、死んでもいいんなら一度やってみるさ……」
 と吐出すようにいって、口をへの字に結んでしまった。
 その時の黒吉のよろこび……。それはとても何んといってよいか、口に表わすことは出来なかった。