目が覚めたのは友人宅のソファの上だった。膝を曲げた体勢で寝ていた為、関節がギシギシと油が切れたみたく固まっている。
何かがぴーんと張り詰めたような冷たい空気の朝。
今日は明日、叔父さんの一回忌があるので、須磨の家にスーツと靴を取りに帰ることに。
須磨の家。
もとは爺ちゃんの家なのだが、五年前に爺ちゃんが実家に同居し、空き家になったので、僕が今年の春まで住んでいた。
今は住んでいた時そのままに、家具も服も一部置いている状態。
あの頃の思い出もそのままに。
須磨駅で降りると、薄っすら海の香りがする。散歩でもしようといつもとは反対側の出口から海岸に降りた。
僕は須磨の海が好きだ。
特に秋、冬の季節がいい。
何もない砂浜にポツンと釣り人が立っている。突堤にはカラスがとまり、空き家となった海の家の傍らで野良猫が日向ぼっこしている。
そんな静かな海が好きだ。
住み慣れた街。歩き慣れた砂浜。
ここはいつでも暖かく、僕を出迎えてくれている気がする。
変わらないでほしい。
僕は毎日少しずつ変わっていくけど、ここに来れば、いつでもあの頃に戻れるように、変わらず綺麗なままであってほしいと思います。
気持ちいい散歩ができて、今日はそれだけで満足してしまったかもしれないです。
あなたにも変わらないでほしい、大切な場所はありますか。
冬の寒さ、暖かい海。完

