ホテルで語らうお二人
ヨンウニムの、内からあふれてくる言葉を、りなさんはただ黙って、ただ黙って静かに聞いてあげます。
さっき話した 『血の涙』という映画で、心虚労という・・・水を見ただけで心臓が早鐘のようにバクバクして息もできないんだ。
だから、悪い奴らが僕の目の前で愛する人を殺すのに、何もできないんだ。
「うわぁ~っ」って、絶叫するシーン。
僕のイメージではとっても格好良くて、上手くいったんだけど、
本当に、これでいいと思ったんだけど、監督は首を横にふるんだ。
クソ役者だって。クソ役者。演技のできないクソ役者だと。
実際、映画を観てくれればわかるけど、僕の出番はそれほど多くないんだ。
でも、重要な場面では結構登場するんだよ。
だけど、このシーンがなくなったら、僕はほとんど意味がなくなるんだ。
撮影した意味がなくなる。
なのに撤収だって。もう撮るのはやめだって言うんだ。
監督に、見放されたと思ったよ。監督の前で泣いてしまった。
ふと、思ったんだ。最後の作品になるかもしれないって。
ところが、ひと月ほどして、もともとはスケジュールになかったのに
もう一度撮りなおそうと言われた。
あの日は本当に、これが最後のチャンスだって思ったよ。
とにかく一生懸命やった。とても一生懸命。
撮影が終わって監督に「おつかれさまでした」って挨拶したのに、顔も見ずに帰ってしまわれて。
全部編集が終わってから、電話がかかってきた。
僕一人を呼び出して、見せてくれたんだ。
その時まで、僕はほとんど諦めていた。あれほど監督に叱られてばかりだったし。
それが、編集された映像をみると、自分がすごく格好良く、とても良く映ってるんだ。
それを見たらもう涙が・・・ポタポタ流れて・・・止まらなかった。
監督にはすごく、、、、、本当に感謝してる。
あれ? どうしんたんだろう? 当時を思い出しちゃったみたいだ。とても・・・
(と、照れ臭そうに涙を抑えながら泣き笑いするニム)
ここからは、りなさんのナレーションです。
ごめんなさい、ヨンウさん。
(その8につづく)
映画 『血の涙』 についてお知りになりたい方はこちらをどうぞ
⇒http://ameblo.jp/loveyongwoo/theme3-10074796854