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酔を口実に、誰からともなく部屋を抜け出して戻った自室。

 

扉を閉じた途端、俺の脳は猛スピードでドライブしだす。

 

 

記した通りの夢が見られる。

そんな当に夢みたいな話を目の前にして、

俺がノートに走り書いたのは、

 

ニノと横浜デートしてキス。

 

そんな一行にも満たない短いセンテンスだった。

 

ライブ後の興奮と酒の力で、カタリと外れた俺の心の厳重な鍵。

 

 

「なんで書いたかな。」

 

 

俺は、ベッドに身を投げて深く溜息をついた。

 

 

 

 

ニノが好きかも。

 

いつの頃からか胸に漂うふわふわした綿菓子みたいな掴みどころのない思い。

 

夢ならば…

 

きみにも誰にも知られないまま、この気持ちが叶う様を覗き見たっていいんじゃないか。

 

そんなふうに思ったのだ。

 

 

 

自慢のコンバーチブルにきみを乗せ走る光の海。

とっておきの景色に、きみが魅入るしあわせ。

 

 

夢を思い出せば思い出すほど、

 

「どこをどう切り取っても、ニノを好きなんじゃん。」

 

今までなんとなくボヤケていた心のフォーカスがピタリと合ってしまった自分に戸惑うのだった。

 

 

 

 

それにしても、

もし、智くんの「混線」説が正しければ、ニノが見たのは俺の夢の途切れた先ってことで、そこで

俺は多分、きっと、いや、絶対…

 

キスしたんだ。

ニノに。

 

そう心の中ではっきりと言葉にしてしまえば、

ズクンズクンと打つ脈が波のように身体中に広がって、滅多に熱を持つことのない頬が、火に煽られたように火照るのだった。

 

 

キスって、俺、一体どんなキスを…

 

 

思わず触れた己のくちびる。

 

そして、はっとする。

 

 

だとすれば、ニノの夢で俺は、好きだとも告げずにキスしたことになる。

 

 

「ひでぇ…」

 

 

俺は、糊の利いたシーツに顔を擦りつける。

 

 

夢とは言え、きみをぞんざいに扱った自分にキリキリと胸が痛む。

 

せめて、きみが傷ついていないようにと祈るけれど、目覚めた時のニノの表情を思い返せば、不安ばかりが募った。

 

 

 

ザザッ…

 

不意に耳の奥で鳴った音。

 

それは夢の中で、俺のコートを翻した強い風の音。

 

その「ゆめのおと」に、きみを懐に抱いたあの瞬間の胸の高鳴りが甦える。

 

 

抱きしめたい。

夢じゃないほんとうのきみを。

キスしたい。

きみが蕩けるほどの優しいキスを。

 

 

夢ならばと綴った「夢ノート」。

それが、きみへの思いを、ただ見ていたい夢から叶えたい夢へと変えたのだ。

 

 

さあ、どうする俺。

 

 

その自問に、こたえは簡単に降ってきた。

 

 

「叶えればいんじゃね?」

 

 

今より強く優しく、きみを請け負える男になって、そしてきみに伝えよう。

 

 

「ニノ。」

 

 

俺は真っ白な天井を仰ぐ。

そして、凛と声を張る。

 

 

「好きだ。」

 

 

 

 

fin