真理が仕事をやめてから、静かにいろいろなことが動き出した。
ちょっとした変化が徐々に大きな変化へとかわっていった。
正一郎と出会えたのは、その中でも重要な変化だ。
人生が予想していた方向とは、全然違う方向に行ってしまうほどの変わり方だ。
正一郎はそんな必然と思っていたことに、”違う”と教えるかのように真理の前に現れた。
すべてのとらわれていたものを脱ぎ捨て、お払い箱にしたくなった。
きっと正一郎は、真理にとっての重要な分岐点だと考えた。
今まで長年着ていた愛着のあるコートを脱ぐのは、惜しい。
でももうそのコートは真理にとっては、古くサイズもあっていないものなのかもしれない。
コートを脱いで生活するのもいいかもしれない。そう思った。