ビジネスを行う上で避けて通れないのが、特許権などの知的財産権の活用です

 

特許庁から知的財産権制度入門テキストの2024年度版がでました

https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/2024_nyumon.html

 

これは、特許権等の知的財産権の概要、取得までの手続の流れと必要な書式、そして他人から侵害された時の対応について、わかりやすく説明されています

 

ですので、必要な時・気になった時に、必要な箇所をご覧になることをお勧めします

 

最近、知的財産権に関連して多くいただくお問い合わせは、米国に法人を設立もしくは買収して、日本で持っている知的財産権を米国の会社に移したいというものです

 

これは、米国の方が日本より、知的財産権を裏付けとした資金調達がしやすいという背景があります

 

ただ、税務の面から気を付けないといけない点として、米国の会社に知的財産権を移す時には、「時価」で売買しなければならないという点です

※時価より低い価格で売却する場合には、時価と実際の売却額との差額に税金がかかる場合があるため

 

この時価の算定方法は、以下の3つがあります

 

1番目に原価法。知的財産権を手に入れるのにかかった金額で評価額を決めるという方法です

 

この方法では、金額が比較的客観的であるというメリットがある反面、買い手が将来得られるであろう金額とは整合していないので、買い手が納得せず、交渉が長引くというデメリットがあります

 

2番目に取引事例比較法。似たような知的財産権の売買事例に基づいて評価額を決める方法です

 

直近に似たような知的財産権の売買事例がある場合には、評価額の信頼性が高いとみなされやすいというメリットはありますが、そもそも知的財産権自体がユニークなものであり、「似たような知的財産権の売買事例」が無いことが多い(=時価の算定が困難になる)というデメリットがあります

 

3番目に収益還元法。その知的財産権をビジネスで使うことで将来得られる利益やキャッシュフローに基づいて評価額を決めるという方法です

 

将来得られる利益やキャッシュフローを見積もるのが難しいというデメリットはあります

ただ、売り手も買い手もビジネスを行う際には通常、その知的財産を使って将来にどれだけ利益やキャッシュフローを得られるかを見積もっていますので、他の方法に比べて、売り手・買い手共に同じ土俵で交渉を進めることがしやすく、お互いに納得感が得やすいというメリットがあります

 

また買い手にとっては、買った後の実際の事業が想定通りに進んでいるか(=知的財産権の価値評価・減損会計の適用要否の検討)を、買った後に検証しやすい・監査法人に対して説明しやすいというメリットもあります

 

状況にもよりますが、公認会計士など独立の第三者である外部の専門家が知的財産権の評価を実施する際には、3番目の収益還元法(将来利益やキャッシュフローに基づく方法)で評価するとともに、参考情報として1番目の原価法や2番目の取引事例比較法による評価額を添付するケースが多いように思います

 

参考になれば幸いです