私の胸に仄かな悲しみを残したのは、
メッキを剥いで剥いで剥いで行った男の最後の姿に、どこをとっても私が危ない橋を渡ってまで手を伸ばすほどの魅力が残されていなかったことだ。
「嘘をつくのが苦しくなった」
と言って、頼んでもいないのに勝手に裸になったこの人は、
どこにでもいる、普通にずるくて弱くてつまらない男だった。
魅力的な芸術家の男を精一杯気取りながら私に近づいて、
そして、足りないものを男からの評価で埋めようとしていた、同じくしてずるくて弱くてつまらない私は、いとも簡単にそれに心酔した。
それだけの物語だったと今なら思う。
馬鹿みたいだとは思わない。
世界の見え方なんて、物事の解釈なんて、本人の都合によってその都度変わるものだからだ。
しかし、
相手の魅力とか男としてのレベルとは関係なく、情愛に似たやさしい思いは、どうしたって残ってしまうから。
ところで、男が別れた相手に連絡をしてくる理由は何だろう。
だいたいの男が、なんらかの理由をつけて別れたあとも一度は連絡をしてくる。
しかも今回は、けっこうな罵り合いの果てに決別したのだ。
もう完全に終わったなと、私は思っていた。
それなのに、先方が謝ってまで!私との繋がりを切りたくなかった理由って。
いまでも私を好きだとか、
そういうことも彼が言ってたようにちょっとくらいはあるかもしれないけど、
死ぬほど下品に言えば(あえて死ぬほど下品に言う意味←)、次に突っ込む穴が見つからなかったって話に行き着くのではないかしら。
たぶん探したんだと思うけど。
でも見つからなくて、手っ取り早くやれそう(に思えた)元カノの私に頭下げて、手元に置いておきたかったというか。
懐かしみというほど黄金色に醗酵してもない、復縁希望というほど真摯でもない、
新しい彼女が欲しいけど見つかんなくて七転八倒してる男の下半身事情がやりとりから見えてくるわけで。
よっぽどモテる一部の層を除き、
男性が「そういう関係」になってくれる相手を探すのはけっこう大変なことなのだ。
にも関わらず、「そういう関係」への欲求はたぶん生理的な面から女よりも緊急度が高いのだ。
あと、実際やるかどうかはさておき、「させてくれる女が1人もいない(モテない)」状況って、プライドの面でもたいへん苦しいのではないかな。
だから、私を好きってより、
自分を承認するために私にコンタクトしてきたように、私には思えた。
私は私でなんでそれを相手してるかって言ったら、
情が半分、研究が半分なのかもしれません